再出発日記

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2016年01月18日
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「『永遠の0』を検証する ただ感涙するだけでいいのか」秦重雄、家長知史、岩井忠熊 日本機関紙出版センター

小説も映画も見た。わりと早い段階で小説を読み、いち早く違和感を覚えて読書本棚のサイトに早い段階で最低点をつけたあとに長々と感想を書いた。感情的ではない最低点は初めてだったためか、私の読書レビューの中では1番多く「いいね」がついた。反対にいえば、その時もその後もずっと、この小説には読者の最高点が延々と続いていて、私のレビューが目立っただけのことではあるのだ。

その時に抱いた違和感は一言でいえば、庶民が戦争に向かっていかざるを得ない構造に対する批判を欠如させたままに、ただ特攻のパイロットを持ち上げているというのに尽きる。ただ、作品の中には軍隊の非人間性や特攻戦術の無謀さにたいする批判もあることはあり、それを全体の中にどう位置付けたらいいのか等々の分析はできていなかった。また、映画には問題だと思っていた朝日記者批判は無くなっていて、理屈部分も影をひそめて、感情だけを揺さぶる映画になっていて、さらに分析は難しくなった。

第一部の秦重雄氏の小説批判が1番参考になった。私の感じていた違和感を全て言葉にしてキチンと論理的に批判していた。

一つは部下に向かって「どんなに苦しくても生き延びる努力をしろ」等々の「決めゼリフ」のリアリティの無さをキチンと指摘したあとに、非人間的な軍隊でも超人的なスキルを持っていれば、何とかアイデンティティを貫けるのではないかと読者を錯覚に導かせる構造になっていると指摘しているのである。妻へのの愛情も同じようなトリックで出来ている。

その他、宮部には特攻に行く理由のがないことや、米軍行為の美談、憲兵・靖国・御前会議の登場がゼロ等々の不思議を挙げたあとに、そっと置かれた作者のイデオロギーを幾つか指摘している。曰く「誰も戦争をなくせない」「(ゼロ戦搭乗員たちを戦犯にしたのは)戦後の民主主義の世相」等々。そして、作品全体の中では、若い読者にこのような真のメッセージを問いかけていると秦重雄氏は言う。

「かつての若者たちは、上層部が愚劣でも、この美しい国を守るために、にっこり笑って死んでいったのではないか、君もそれに続く覚悟はあるのか」

いや、私は、若い読者は死ぬことまで考えなくてもいいと思う。多くの読者が涙を流して「感動した」という記憶だけを残せばいいのだ。この作品を「肯定的に記憶」すればいいのだ。現代の「会社人間として従順に生きなければ生き延びれない」(軍隊のような)社会の中で、こういう人間もあり得るかもしれない、と錯覚させるだけでも、著者としては十分想いは伝えたということになるだろう、と私は思う。

そういう意味では、映画の中で(原作にはない)シーンを付け加えたのは、非常に罪作りだった。最期、宮部は微笑みながら特攻していったのである。監督は「狂気の先の諦観」と表現したかったみたいだ。しかしそれは先の原作者の「隠したメッセージ」にも連なる大きな誤解を生む不要な演出だった。
2016年1月13日読了





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最終更新日  2016年01月18日 12時06分42秒
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