再出発日記

再出発日記

PR

フリーページ

お気に入りブログ

『村上隆の原点』(復… New! Mドングリさん

グリーンピースの秘… New! 天地 はるなさん

世田谷代田を訪ねて New! 七詩さん

韓国の家電が大きい件 New! はんらさん

源氏物語〔1帖桐壺19… New! Photo USMさん

カレンダー

2018年03月21日
XML
テーマ: 本日の1冊(3686)


文学日記(10)「人生の親戚」大江健三郎

池澤夏樹個人編集日本文学全集第一期7回配本は、大江健三郎1人に本を充てている。大江健三郎に関しては、嫌悪感は「あまり」ない。むしろ、9条の会呼びかけ人の「生き残り」として今やひとり頑張ってくれているのだから、好きな作家だ、みんな読んで!と言いたいところなのだが、苦手な作家だ、という方が近いかもしれない。

初めて読んだのは1977年、高校生の時だ。大江健三郎はその時、芥川賞作家の代表格みたいな人だったから、あの頃は今よりももっと芥川賞は権威があって、読んでおくべき教養書みたいな位置づけだったので、1番手っ取り早い新潮文庫を手にとった。ただし、鮮明に覚えているのは、受賞作品「飼育」ではなく、大学病院の死体処理のアルバイトに従事する「死者の奢り」である。ともかく、何処が面白いのかわからなかった。次に読んだのは、1982年3月、わたしは大学新聞の取材で、ヨーロッパの何十万人という反核集会に呼応して日本でも真似するように起こった広島集会に行っていた。そこで大江健三郎が何やらスピーチしていたのだが、人ごみに押されて結局聞くことができなかった。そのため、わたしは何かを取り戻すために、当時本屋に必ず並んでいた岩波書店箱版の「ヒロシマノート」を読んだ。意味はわかった。しかしあまりにもわかりにくくわかりにくく書いている印象が残った。後に、本多勝一が句読点が不適切で1文が長すぎる悪文の見本のように紹介していて、我が意を得たりと思ったものである。

そんなこんなで、それ以降、わたしは大江健三郎の作品には、極力近づかないようにして来た。今回実に35年ぶりに読んで、なんか仲直りをしたような気分がする。

解説では、池澤夏樹がこの作家に大いに影響を受けたと告白している。大江文学の特徴は、大江の文体とは違ってセンテンスも短くて読みやすいので、その解説を参照してほしい。そこに書いていないわたしの感想をあえて言う。一つは、驚いたことに、中上健次とまた違った意味で、古事記以来繰り返されて来た日本文学の構造がここにも繰り返されている。ヒロイン(ヒーロー)は、大きな厄災を迎えて、大いなる旅に出る。一つは、本来「性」は隠されているが、物語においては、堂々と明るく描かれる。一つは、会話文は「」で分かち書きがされない。センテンスの中に紛れ込んで、時々だれが話しているのかもわからなくなる。物語は、物、語るのである。

とっても興味深い。(「人生の親戚」は1989年新潮社刊行)

2018年3月読了





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2018年03月21日 10時56分07秒
コメントを書く
[読書フィクション(12~)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

永田誠@ Re:アーカイブス加藤周一の映像 1(02/13) いまはデイリーモーションに移りました。 …
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
生まれる前@ Re:バージンブルース(11/04) いい風景です。 万引きで逃げ回るなんて…
aki@ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) 日本有事と急がれる改憲、大変恐縮とは存…
北村隆志@ Re:書評 加藤周一の「雑種文化」(01/18) 初めまして。加藤周一HPのリンクからお邪…
ななし@ Re:「消されたマンガ」表現の自由とは(04/30) 2012年に発表された『未病』は?
ポンボ @ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) お元気ですか? 心配致しております。 お…
むちゃばあ@ Re:そのとき 小森香子詩選集(08/11) はじめまして むちゃばあと申します 昨日…
KUMA0504 @ Re[1]:書評「どっちがどっち まぎらわしい生きものたち」(02/26) はんらさんへ 今気がつきました。ごめんな…

バックナンバー

・2024年05月
・2024年04月
・2024年03月
・2024年02月
・2024年01月
・2023年12月
・2023年11月
・2023年10月

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: