桜の森の満開の下

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とも@ Re:ママ(11/18) この物語はおもしろいです。
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saku5319 @ はじめまして  可愛い、お話。私も転校した事あります…

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2006.09.17
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温めるだけの『田舎おでん』


 今日が地球の最後だからといって、ジタバタしても始まらない。普段と変わらず、今日という日を淡々と生きるだけだ。
 地球最後の日が確定してからというもの、一部の芸能人や政治家、企業経営者などが次々と宇宙に脱出していった。
「人類の種を絶やしてはならん!!」
 彼らは一様にそんな理屈をぶって大義名分を作ろうとしたが、金にモノをいわせて自分だけ死から逃れようとする様は、テレビで見ていて吐き気がした。
 今の宇宙ステーションには人が繁栄していくだけの資源も食料もないのだ。地球に残る我々庶民より長生き出来たとしても、せいぜい数ヶ月か、長くて一年。それが分からないほど彼らはバカじゃないはずなのに、人間は何と悲しい生き物だろう。
 犬が電柱の脇で止まり、脚を上げておしっこをかけた。ほら見ろ、と私は思う。犬でさえいつもの決まった場所で、決まった行為をしている。今日が地球最後の日でも、ちっとも動じてないじゃないか。
 私は胸ポケットからタバコを取り出して火をつける。朝靄に、紫煙が混じる。あと十数時間で、人類を滅亡させる巨大隕石が地球に激突する。空を見上げ、今更のように人生を振り返ってみる。私は今日まで、精一杯生きただろうかと。このまま死んで、後悔しないだろうかと。
 明日が、未来が保障されていたときはそんなこと考えもしなかったのに、人間なんて本当に勝手なものだ。
 地球最後の晩飯はおでんにしよう。ふと、そう思った。理由なんかない。そもそもメシを食うのに理由などいらないのだ。そのとき食べたいと思ったものを食べればいい。いつもと同じように。





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Last updated  2012.04.11 00:22:57
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