うたのおけいこ 短歌の領分

うたのおけいこ 短歌の領分

2025年04月25日
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□ 日本人の祖先の「3系統説」、従来の定説に修正迫る
ゲノム解析で進化人類学は「人類、日本人の本質」を探究

【サイエンス・ポータル 内城喜貴氏 2024.7.24】



ただこの問題は、ややもすると、かたやアイヌ民族・琉球民族(沖縄人)などへのレイシズム(人種・民族差別)的言説につながりかねない側面があり、こなた日本国家・大和朝廷・天皇(家・制)の起源にも濃厚に関わってしまう、最高度に歴史的・政治的な問題でもあることから、これまで研究者の口は重く慎重で、隔靴掻痒の感は否めなかった。

が、ゲノム解析という最新の科学技術の進歩により、研究者も有無を言わせず自信を持って自説を吐露できるようになったといえる。
薄々は分かっていてもなかなか公にし難かった所説に、強力な根拠(エヴィデンス)の後ろ盾が付いた感じだ。

また、この問題は、わたしたちが愛してやまないこの美しい日本語(漢語や外来語を除く「やまとことば」)の成立にも直接関わってくる。

リンク先の記事は、異なる2つのソースを基にしており、前半部の理化学研究所(理研)発表の部分と、後半の金沢大学(覚張隆史助教らのグループ)発表の部分でやや齟齬があり錯綜しているが、特に注目されるのは後半の金沢大学由来の部分である。

これまで言われてきた縄文人+弥生人の「二重構造モデル」の構図に加えて、いわば「古墳人」というものの存在があった(三重構造モデル)として、発表当時大きなニュースになったことは記憶に新しい。覚張助教は、文化勲章確定であろう。

この発見を、くだんの金沢大学・覚張隆史助教(がくはり・たかし、考古分子生物学)の出演も得て詳細に報じた NHK『フロンティア』 では、もう一歩進んで、やはりアイヌ民族に縄文人の遺伝的形質が最も濃厚に残っていることも明らかにされた(約70%)。これも従来から言われてきたことだが、最新科学の裏打ちがあった形だ。


総勢たったの1000人ほどだった。これが「縄文人」にほかならない。現在のタイ奥地のジャングルの中に住む少数民族・マニ族ときわめて近い遺伝子を持ち、ホアビニアン文化という狩猟採集文化を持っていた。

その頃これらの新天地にほかの人間はいなかった。黄海は陸地で、現在の朝鮮半島も含めて大陸の一部だった。日本海は巨大な湖で、対馬海峡は川に過ぎなかった。

獣がいれば狩って食糧にした。これはよほどのごちそうだった。木の実でも草の葉でも魚でも貝でもざりがにでも昆虫でも茸でも、食えるものはすべて口にした。無人の荒野と蒼古の森をひたすら歩いてゆっくりと北上し、最も早くこの地にたどり着いた人々だった。当然、移動の途中で他民族との交雑もなかった。まさに、フロンティア精神の体現者だった。

その後18000年前ごろから温暖化(氷期の終わり)によって海面が上昇し、島国となったこの国で、16000年前から3000年前まで1万数千年の長きにわたって彼らは平和と繁栄を享受し、縄文文化を花開かせた。青森・三内丸山遺跡のような集落も各地に築いた。

この縄文時代後期には農耕の萌芽のようなものもあったが、ほとんど狩猟採集生活のままだった。縄文人同士での交流・交易も盛んだった。
彼らの遺伝子は、現代のアイヌの人々に7割、沖縄の人々に3割、東京の人々に1割残っている。

しかし、世界は動き始め、1万年前ごろに農耕が、5000年前ごろには「文明」が発生した。
しばらくして、約3000年前、北東アジア(シベリア)方面から朝鮮半島を経て、船で渡来人がやってきた。一時的な寒冷化や人口の飽和が背景にあったのではないかとも考えられている。
彼らは稲作などの農耕や金属器などの先進技術を持っていた。農業の伝来によって土地や水利をめぐって争い・殺し合いも起こったが、まだ大規模ではなかった。縄文人と渡来人はおおむね友好的で、婚姻・混血・融合が進んだ。
この縄文人と渡来人のDNAを合わせ持った人々が「弥生人」である。その遺伝子組成は、縄文人が約6割、渡来人4割である。

ここまでの大筋は、従来も言われてきたことだと思う。歴史好き、とりわけ古代史好きであれば、だいたい上記のように理解してきた。


ところが今回、金沢大学・覚張助教が提唱した新説は、さらにもう一段を加えたところにある。
3世紀半ばごろ(西暦200年代、1770年ぐらい前)から、忽然として日本国家につながる強大な大和王権が形成されていった。「古墳時代」の開幕である。この国にいきなり文明が開化した感がある。それ以前には卑弥呼の邪馬台国もあった。

この過程は従来謎とされ、弥生文化の中から自然発生的に成立したと説明されてきたが、今ひとつ腑に落ちない感じがあった。が、今回のDNA研究によって、この時期に大量の渡来人が流入していたことが明らかになったという。

遺伝子解析によれば、この時期の新しい渡来人のゲノムは、庶民の人骨のDNA解析で、実に6割以上に一挙に跳ね上がったという。
従来も、渡来人がちらほら来訪したとは言われてきたが、ごく少数だと見られていた。が、今回の分析ではそれどころの騒ぎではなく、庶民を含むきわめて厖大な人々が日本列島に押し寄せたと見られる。


したがって歴史的記録(史料)はないが、その代わり考古学的資料は豊富だという。

この「欠史時代」に天皇(すめらみこと)という地位が生まれ、その人を中心とする大和王権が成立した。
この大枠のフォーマットが、まるでお伽噺みたいに1700年以上続いてそのまま現代に至っている、世界でも類を見ないギネスブック級の国家がわが日本である。

その空白の前は、『三国志(正史)』の魏志倭人伝の、邪馬台国の卑弥呼の跡継ぎ・台与(臺与・とよ)または壱与(いよ)が魏の国に朝貢外交をしたという記事であり、空白の後は、「讃・珍・済・興・武」で有名な倭の五王が中国南朝の宋などと外交関係を持ったという正史『宋書』などの記事である。
「済」が允恭(いんぎょう)天皇、「興」が安康(あんこう)天皇、「武」が万葉集の劈頭を飾る名歌を詠んだ雄略(ゆうりゃく)天皇であることはほぼ確実と見られ、定説である。

折しも大陸中国は、全土を支配していた超大国・後漢の滅亡後、ファンも多い『三国志(演義)』で知られる魏・呉・蜀の三国鼎立時代となり、その後も群雄割拠の興亡と戦乱(いわば内戦)の時代となっていた。各国とも、生きるか死ぬかの闘争で精いっぱいで、海の向こうの島国に外交的関心を寄せるどころではなかったのだろう。

その時代の華々しいいくさを描いた映画はエキサイティングだが、同時代の民衆にとっては災厄でしかなく、大量の難民が発生していた。それらの民衆が、戦乱に嫌気がさしてか、生命の危機に瀕してか、海の向こうの東の伝説の理想郷「蓬莱」の国を夢みて日本に逃れてきた可能性はきわめて高い。

彼らの一部は、文字(漢字)、機織り、製鉄技術などの先進的な文化を持って来た。「原住民」である縄文・弥生人にとってはまばゆいばかりの文明だったろう。

彼らの出自はさまざまだが、おおむね現在の中国の版図の人々と遺伝子を共有しているという。彼らの民族性はまだ明らかにされていないが、少数民族や漢民族(いわゆる中国人)もいたのかも知れない。
特に、地理的に近い「呉」(現在の上海を中心とする地域の国)などからは、故郷を捨てて台湾・琉球列島伝いに続々とやって来たのではないか。

最初は言葉も通じず、どうやってコミュニケーションをとったのか、想像もつかないと覚張助教も言う。
ただ、彼らの一部は文字というものを知っていて、記憶だけでは到底無理な叡智を蓄え、話し言葉だけでは不可能な高度な思考ができた。
美麗な「呉服」を着ていた。機織りなんて、現代の我々の頭でも、よほど勉強しなければ、どうやって糸が布になってゆくのか皆目見当もつかない高度な技術である。
そして、一旦緩急あれば、鉄製の武器に物を言わせることもあった。
当時アジアでは最高の文明人であった。

知識やスキルのある者が、政権に重用されたことは確実で傍証も多い。
その知識の中には、政治的・軍事的なものも含まれていた。

こうした趨勢の中で何が起こったのか、上記の通り全く文字の記録がないので詳細は分からず、想像を逞しくするほかはないが、なんらかの激動があったことは間違いないだろう。

ただ、この辺りからは、日本史の機微というか、「やばい」領域に入ってゆくことになる。
天皇(制)の起源論に近づくからだ。
根拠もなく下手なことは言えない感じ、日本人なら分かるよね。
NHKも覚張助教もやや竜頭蛇尾で、言葉を濁してお茶を濁した。
私もそうすることにする

PS. 日本語の起源についても、番組では全く触れられていないが、一定の知識のある者には間接的ながら示唆に富んでいる。
有力な言語としては世界的にも稀な、母音が非常に多い日本語の音韻は、基本的には明らかに南方・海洋系の特徴を示しているとつとに言語学者は言っていたが、縄文人の出自を見れば当然である。ハワイ原住民の言語・ハワイ語もその末裔だろう。日本語とは遠い親戚である。
ハワイ、ホノルル、カメハメハ。

言葉の響きが明るく朗らかで、歌を唄ったりするのに向いており、現代の外国人からしばしば「かわいい」と評される日本語音韻の特徴である。
まさに「サザン」(南方)の響きである。
故・大野晋学習院大教授によるスリランカ原住民の「タミル語」同源説も思い出される。
その縄文人の南方系言語の基層に、北方系の渡来人の言語が、膠着語的な文法や単語などを取り込みつつ融合し、弥生時代には基本的な日本語(やまとことば)が成立したと思われる。
これまた従来から言われてきたことではあるけれども。

・・・この国に生まれて本当に良かったと、いつも口癖のように子供にも言っている私にとっては、日本、そして日本人の成り立ちについて読んだり考えたりしているのは至福の時である。
そういう感覚を持っている人々の代表が、この分野の専門の学者たちなのであろう。もちろん、日本最高度の知性が結集している。
ただ、彼らの学説の応酬などを読んでいると、あまりにも精緻で頭が痛くなるか眠くなるけれども、ごくごくかいつまんで書けば上記のようなことだと思われる。
いいなあ、幸せな人たちだなあと、羨ましく思っている





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最終更新日  2025年05月01日 06時48分50秒
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