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元卓球部裏部長

元卓球部裏部長

2004/12/12
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カテゴリ: カテゴリ未分類
ネタの無い日はテーマに頼ってみようと思います。




「回る」


新聞の一面を、赤い星が彩る。

火星大接近、もう何日もこの話題で持ちきりだ。
つい最近まで空を見上げたことさえなかった奴が、うんちくをならべているのを見かけるようになった。
どうやら、火星は687日ほどで公転するらしい。

特に興味は無いなと言うと、
「お前は浪漫が無いな」と言われた。
数字をならべることが浪漫になるのか疑問に思ったけれど、聞くのはやめておいた。



今日がその大接近の日らしい。
空を見上げてみたけれど、僕には昨日の火星との違いがわからなかった。
今夜は夜更かしをする人数が、歴史上最も多い日になるだろう。
そんなことを考えると、少し嫌気がさしてくる。

街を歩く。
心なしか、いつもより歩いている人の数は多い。
ただの先入観かもしれない。

「かせ~が、とって~もあぁかい~から~。」

どこかの酔っ払いが大声で叫んでいる。
僕は夜空から逃げるようにして、地下の店に入る。

一人でカウンターに座る。

店のざわめきは耳障りなほどではない。
ColtraneのSpiritualが、僕に居場所を作ってくれる。
暗めのライトが薄い影を落とす。

一人の女性が店に入ってくる。
僕は反射的に彼女を見る。

赤いワンピースを揺らしながら、歩いてくる。


僕にはすぐにわかる、彼女が火星人であることが。
いくら地球人の姿をしていても、彼女が火星人であることは間違いなかった。
何故誰もそのことに気付かないのか、不思議で仕方なかったほどだ。
あれだけ火星のことで騒いでおいて、火星人さえ見分けられないのか。

そして、彼女も僕が気付いていることがわかっているようだった。
まっすぐにこちらに来て、隣に座った。
平然とした態度で、ブラッディマリーを頼む。
赤い色が美しいカクテルだ。
僕は対抗してブルームーンを頼んでみる。
それぐらいの抵抗しかできないから。

無言。
僕らはただ、目の前のグラスを傾ける。
僕は意外にも、冷静を保っていられた。
確か、ブラッディマリーはイギリスの王女の名前が由来だったよな。
そんなことを思い出す。
すぐ隣に宇宙人がいるっていうのに、のんきなものだ。


やがて彼女は口を開く。
「地球があんまり速く回るもんだから、なんだか酔ってしまったみたいよ。」



Spiritualはそろそろ終わるみたいだ。
そんな時に火星の公転周期を思い出したとしても、なんの役に立つだろう。





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Last updated  2004/12/13 01:48:57 AM
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