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三十年以上前のある朝のこと、Sちゃんは約束を破るつもりでいた。
「朝5時から来ませんか」と誘われ、返事こそしたものの、心の中では決めていた。「行かない」と。
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だから、その夜は気楽に眠った。
ところが、夢の中に現れたのは——大嫌いなお父さんだった。
「10,000円やるから、起きろ」
お父さんはそう言って、お札をひらりと投げた。Sちゃんは思わず、両手を大きく広げた。受け取ろうとした、その瞬間——目が覚めた。
時計を見ると、約束の時間にまだ間に合う。
起き上がり、着替えて、Sちゃんは朝活の会場へ向かった。半ば引きずられるように。それが、すべての始まりだった。
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それから三十年以上が経つ。
毎朝の「わたしが輝く、私時間」の中で、Sちゃんの心は少しずつ変わっていった。命の源である親への感謝が、じわじわと湧いてきた。
がんを患い、弱っていった。Sちゃんは迷わず、自分の家に呼び寄せた。病院ではなく、そばで支えながら、一緒に日々を過ごした。少しずつ細くなっていくお父さんを、そっと抱きしめて、Sちゃんはこう伝えることができた。
「お父さん、大好きだよ。ありがとう」
あんなに大嫌いだったお父さんに——心からそう言えた日のことを、今も覚えているという。
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今のSちゃんを毎朝起こすのは、お父さんではない。飼い猫だ。
午前3時を過ぎると、ふわりと枕元にやってきて、Sちゃんを起こす。お寝坊はさせてもらえない。
そして、朝活へ出かける前、玄関のドアを開けると——猫は飛び出すわけでもなく、じっとそこに座って、見ている。「行ってらっしゃい」と言うように。毎朝、そうやって見送ってくれるのだという。
それを聞いていたEさんが、ぽつりと言った。
「お父さんみたいだね。娘の幸せを願って、ずっと見守っている感じ」
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旧暦のお盆が、来月やってくる。
あの夢の中で、お札を投げてくれたお父さん。もしかしたら、あの朝から今日まで、ずっと見守っていてくれたのかもしれない。猫の姿を借りて。夜明け前の静けさの中で。
朝活の仲間の話を聞きながら、親に心をはせる、やわらかな朝でした。
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