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監督・脚本:テレンス・マリック製作総指揮:ジョージ・スティーヴンス・Jr.原作:ジェームズ・ジョーンズ撮影:ジョン・トール出演:ショーン・ペン、ジム・カヴィーゼル、ジョン・キューザック、ニック・ノルティ 「地獄の逃避行」(74)、「天国の日々」(78)以降、映画界から遠ざかり伝説的な存在となった監督、テレンス・マリック復帰作。 1999年 ベルリン国際映画祭金熊賞(テレンス・マリック)「シン・レッド・ライン」 人間の正気と狂気を隔てる1本の細く赤い線。 1942年、太平洋戦争の日米激戦地、ガダルカナルを舞台に、生死のはざまに生きる米兵たちの人間模様を鮮明に描く。撮影の多くはガダルカナル島と地形・植生が似ているオーストラリア・クイーンズランド州で行われたという。あまりにも美しい風景の戦争映画だったので深く印象に残った。 美しすぎるがゆえに、残酷な戦闘シーンが強烈に哀しく映った。 ※ 1942年5月、日本軍はガダルカナル島の対岸にあるツラギ島に上陸し、翌年2月にガダルカナル島北西部のエスペランス岬から撤退するまでの9ヵ月間、陸と 海で日米両軍に多くの犠牲者を出した。ガダルカナル島での最初の戦いは、1942年8月7日に日本軍が建設したルンガ飛行場を奪取するためにホニアラの東約15kmにあるレッドビーチに上陸したアメリカ軍と、それを取り戻すために8月18日にタイボ岬に上陸した日本軍一木支隊の間で行 われた。※8月20日、日本軍一木大佐の率いる将兵800人が「バンザイ」を叫びながらアメリカ軍の機関銃に向かって突撃した。日本軍はブラッディ・リッジ(血まみれの丘)からギフ・リッジ、シー・ホース・リッジと激戦を続けながら次第に島の西へと撤退することになった。この間に、日本軍はマラリアなどの病気や餓死による死者も多く (この為、この島を別名餓島と呼んだ)、1943年2月にガダルカナルを放棄した。 確かに米軍による210高地攻略シーンは戦争そのものの迫力感があったが、この映画に歴史的史実を忠実に求めるなら、この映画は上記のようなストーリーの映画ではなかった。 哲学的視点に立ち、すべてにおいて正反対なものを対比させている映画だった。 木漏れ日さす美しい熱帯雨林に共栄共存するメラネシア原住民と野生動物の平穏な日々。 真夏の台地は緑萌え、雲を運ぶ風の行方に波打っている。ジム・カヴィーセル演ずるウィット二等兵は、神々しい「彼らの世界」に足を踏み入れ受け入れられていた。 この映画は、戦争というものを冷静な視点で捉えたウィット二等兵のナレーションで始まる。 自然界の静寂が破られ、上陸してきた陸軍歩兵隊と、それを待ち構える日本兵の間で銃撃音と地雷の爆破音と人間の悲鳴が響き渡る。故郷から遠く離れたカダルカナルの地で、シン・レッド・ラインぎりぎりのはざま、ベン・チャップリン演ずるベル二等兵は、美しい妻との思い出を夢想し続けた・・・。 †―・―†―・―†―・―†―・―†―・―†―・― 観客はこの映画から、宝石のように美しい南太平洋の島々も、動物と共に平和に暮らす原住民も、最前線で殺し合う兵士たちさえも、すべてが、神を冒涜した”戦争”の犠牲者なのだというメッセージを受け留める・・・。
2010.03.23
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2001年(フランス)セザール賞、主要4部門受賞作品 / サイコ・サスペンス 監督賞(ドミニク・モル) 主演男優賞(セルジ・ロペス) 編集賞(ヤニック・ケルゴ) 音響賞(フランソワ・モレル/ジェラール・ランプ) パリで日本人のフランス語講師をしているミシェルは、蒸し暑い夏の日、妻と3人の子供たちを車に乗せ高速道路を南へ飛ばしていた。バカンスを家族と過ごす為、緑豊かな山奥に古い別荘を購入している。でも、運転している車は整備不良のワゴン車で、クーラーも効かず、暑さで子供たちはぐったりし、ぐずり始める。赤ん坊の泣き声、幼い娘たちの奇声、妻のイライラ・・・蓄積するミシェルのストレス・・ 無理をしている幸福感が描写され、破裂寸前のミシェルの心理状態が映し出される。休憩の為、途中で立ち寄ったサービスエリアで、ハリーと名乗る高校時代の同級生に会ったことからこの映画の狂気の本筋が始まっていく。 _____ この映画がとても秀逸だと感じたのは、この映画が、単純に観客の恐怖心だけをあおった猟奇的サイコ・サスペンスではなく、むしろ真逆で、ありきたりの日常の中に近づいてくる何か得たいの知れない恐怖心、違和感を描いているところ。 ハリーは平凡に生きてきたミシェルの文才を呼び覚まし熱烈に応援しようとする。 美しい花を育てる為、邪魔な雑草を間引くように、常軌を逸脱したハリーの狂気が進行していく。 BGMにクラシック音楽が流れ、狂人のピュアな心理が演出される。 観終わって、もうひとつの考え方が浮かんだ。この映画のハリーという存在は、実はミシェル中のもう一人の自分、「潜在意識」 を具象化させたものではなかったか・・と。
2010.03.05
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