仁志・多喜馬の戯言日記&戯言通信

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2009年10月19日
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 新しい知識を得ることは面白いもので、昨日は松山市が主催する「地域文化講座」というものに参加してみた。そもそもこの講座に参加したのは、講座の内容が「牡丹灯篭の変遷」となっていると勝手に思い込んで、(パンフレットをよく見ると「牡丹灯篭」ではなく「牡丹灯記」で、完全なる私の思い違いだったのだが・・・)私の好きな落語の話が副題だと思っていたからなのだ。「牡丹灯籠」とは、幕末から明治前期に活躍し、落語中興の祖といわれる三遊亭円朝の人情噺の演題であり、「牡丹灯記」とは中国の明朝初年に成った怪異小説集「剪灯新話」中の一篇の題名なのだ。私は落語の内容やその歴史になどには興味があって、三遊亭円朝原作の「牡丹灯篭」という人情噺・怪談噺が、中国の怪談話を元に作られたことは知っていたのだが、その変遷は少しも知らなかったのだ。

 昨日の講座では三遊亭円朝原作の「牡丹灯籠」の発端で、幽霊であるお露が恋人萩原新三郎のもとに夜な夜な通うという趣向が、「牡丹灯記」に由来するものであることは疑いを容れる余地がないということから始まったのだが、その長編の噺が「牡丹灯記」をそっくりなぞっただけのものでないこともまた確かであると講師の先生が言っていた。また、この「牡丹灯篭」という噺が、速記術で書き起こされた最初の噺でもあることにも講義の中で触れていた。その昨日の講義では、両者の間に横たわる文化的背景の違いを両者の精読を通して考えていく内容だったのだが、しかも明治時代にこの「牡丹灯記」を「世界怪談名作集」の1編として日本語に訳したのが、あの「銭形平次捕物控」の作者として有名な岡本綺堂であるということを、私は昨日の講座で初めて知ったのだ。

 江戸時代からの幽霊の常識を覆し、カランコロンと駒下駄の音をさせてやってくる美しい幽霊・お露さんの物語である「牡丹燈籠」は元は中国の古典なのだが、それは明代の怪談を集めた「剪燈新話」の中の1編「牡丹燈記」であるのだが、この物語は16世紀初めに日本に伝来したそうで、それを読んだ近江六角氏の家臣・中村豊前守の子息が、その中から3編を選んで訳して「奇異雑談集」を作ったのがそもそもの始まりだったそうだ。これが日本でのこの物語の初出で、「女人死後男を棺の内へ引込み殺す事」という題名だったそうで、現在のものとは登場人物や設定も微妙に違っているのだが、この中国の怪談話を元にして、「御伽婢子」や「雨月物語」などにも似た物語が載っているそうだ。

 江戸時代初期の浄土真宗のお坊さんであった浅井了意が「伽婢子」という本を書いたのだが、その中でこの物語を舞台を日本に移し、「牡丹燈籠」の名前で発表しているのだ。その本によると舞台は天文戊申年の日本ということになっており、妻に先き立たれ寂しく暮らしていた男の名前は萩原新之丞で、燈籠は原本の上元ではなく盆の精霊祭の燈籠にしているそうだ。そして、燈籠を女の童に持たせてくるのは二階堂の息女である浅茅となっているのだ。その他の構成やストーリーはほぼ同じだが、贈答の恋歌などを配した巧みな翻案になっており、けっこう面白き読み物になっているそうで、口語訳も付いているそうなので講師の先生からは読むことを進められたのだ。

 このような経過をたどって三遊亭円朝の噺が出来上がってきたそうなのだが、三遊亭円朝がこの「牡丹灯籠」の発端噺を作ったころには、その部分自体は江戸や東京に住んでいたの庶民には、馴染みの物語だったそうなのだ。その世間に知れ渡っていた物語を発端にして、今でも高座にかかられている噺を作った三遊亭円朝は、やはり素晴らしい戯作者の一人といっていいのだろう。






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最終更新日  2009年10月19日 02時22分31秒
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