私も維持管理等をするうえで迷惑だと感じていたのだが、国土交通省は本来なら部外者が立ち入り禁止の防波堤で、釣りをする人が後を絶たず転落事故も起きている状況を受け、防波堤を釣り場として開放する際の安全対策を示した指針を作成する方針を決めたそうなのだ。数カ所の防波堤を試験的に開放し安全に釣りをするための管理体制や必要な設備を検証し、その結果などを基に今年度中に指針をまとめる予定だそうなのだ。
防波堤は今回の東北の大震災でも話題になっているのだが、外海からの波を防ぎ港内を穏やかにしたり、津波による浸水を防止したりするのが目的で造られており、人の利用を想定していないため自治体や港湾管理者は通常は「立ち入り禁止」の看板や柵を設けるなどの侵入防止策を実施しているのだ。しかし、全国いたるところで釣り愛好家から良好な釣り場と見られていることもあって、侵入が恒常化している防波堤も多いのだ。
これは荒天時の高波などで海に転落し死亡する事故も起きているためで、国土交通省は防波堤の釣り利用を想定した指針を作り、自治体や港湾管理者が防波堤の開放を検討する際に参考にしてもらうことにしたのだ。防波堤は本来釣り場ではなく防災施設・漁業港湾施設で、漁具を傷つける等その機能を損なう行動は禁止されているのだ。
私はあまり釣りをしないのだが釣り好きに言わせると、釣りに向いている天候は必ずしも良いお天気とは限りらないそうで、むしろ海が多少荒れ気味のほうが魚の喰い付きが良い傾向があるそうなのだ。海面が波立っていると陸上の人の動きが海に映らにし、海底の砂が舞い上がり潮のにごりで魚の警戒心もうすれて、良く釣れることもあるそうなのだ。海が荒れたときに釣りにとって良い条件が揃うことが多く、多少の危険は承知で釣りに出る釣り人が後を絶たず、無理して波の高い防波堤の先端部や磯に出て、波にさらわれ事故になってしまうのだ。
これらの事故原因は極めてハッキリしており、我々のような工事関係者でも立ち入らに強風波浪注意報などが出ている日に、防波堤や離岸提に行くからなのだ。これまで各地で起こっている防波堤・離岸提からの転落死亡事故は、例外的なほんの数例を除きそのほとんどがシケの日に起こっているそうで、シケの日に防波堤・離岸提に立ち入りさえしなければ、大半の事故は起こっていないことになるそうなのだ。したがって、そうした事故の責任は間違いなく、シケの日に防波堤・離岸提に立ち入った釣り人にあると言われているのだ。
本来は立ち入り禁止だが釣りの穴場スポットとして人気を集めている防波堤や 灯台の利用に国土交通省が「待った」をかけようとしたそうなのだが、これは「いつ転落事故が起きてもおかしくない。これ以上は放置できない」と規制強化の方策を探り始めたとたん、こうした動きに客を防波堤に運ぶ釣り船店などからは 「長い間黙認されてきたのに...。死活問題だ」と困惑の声が上がっているからだとも言われているのだ。
「波しぶきの中で、釣りの醍醐味を味わえる。危険は感じるが、自己責任で利用するのは構わないのではないか」と、10年ほど前から「防波堤に渡って釣り糸を垂らすのが趣味」という釣り人も少なくないのも事実なのだが、全国にある防波堤や灯台の築造年代は最も古いもので約150年前なのだ。その多くが波に洗われて浸食されており、満潮時は水面下に隠れてしまう所もあって、我々からみると維持管理に行くにも危険だと思っているところもあるのだ。
防波堤などは以前から全国の釣り情報誌などで「大物が釣れるポイント」として紹介されているところも多く、太公望の好奇心をかき立ててきたのも事実なのだ。「渡し船」を運航する業者も全国的には相当数存在しており、国土交通省も「港湾施設使用条例などで立ち入りを禁じている」との立場を示しながらも、事実上は防波堤の利用を黙認してきたのだ。
近年では防波堤で釣り人が転落死した事故で、遺族が行政の管理責任を問う損害賠償請求訴訟を起こしており、この事故を参考に満潮時に水没する場所などは、全面立ち入り禁止にするなどの法的や物理的な対策を検討していくそうなのだ。警察関係は「これまでも陸続きの防波堤で柵を壊して禁止区域に立ち入った釣り客らを、軽犯罪法で摘発してきた例もあり、港湾・海岸管理者等の行政から通報があれば立件する」方針を固めているそうなのだ。
長らく黙認されてきただけに全面的な立ち入り禁止などは難しいという指摘もあり、関係者からは「安全に釣りを楽しめるルールを確立できないものか」との声も上がっているのだ。私の住んでいる愛媛県でも「戦後の埋め立てで漁業権を放棄した際の損失補償の一環として防波堤の利用は認められているはずだ」と主張する漁業者もいるのだ。防波堤で釣り人が転落死した事故のあったところでも、防波堤釣りをめぐっては行政当局の規制強化の動きに愛好家らが反発したため、救命胴衣を備え付けるなどの妥協案が検討されているそうなのだが、安全とレジャーの間で「落としどころ」を探る議論が続きそうなのだ。
それと、各地の自治体や防波堤・離岸提近くの漁業関係者に必ずと言ってよいほど指摘されるゴミの問題を始めとする釣り人のモラルの低さも、どう言い訳したところで認めざるのも事実だろう。私が考えるのに最も効果的な方法は頑健な柵や門扉を設けることではなく、シルバー人材で十分なので入り口に監視人を立てることができないかということなのだ。釣り人全般のモラル向上を訴えたところで現在の状況を考えるにどうにもならないのだから、人件費の予算捻出を考えて一刻も早く防波堤・離岸提の監視員養成を考えた方がよさそうだ。
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