日本における円形交差点としてはロータリー式交差点のみが定義されていたのだが、交通量が多いほど大きな回転半径がないと流れに乗れる車が減り、どうしても「待ち」が増えることからせっかちな日本では普及しないといわれてきた環状交差点は、一般に「ラウンドアバウト」とも呼ばれる。信号機が不要なのでその設置費用や維持管理費を削減できるほか、信号待ちの時間を解消でき停電時にも交差点の機能を維持できるなどの利点を持つとされる。全国には現在でも円形の交差点が 140 カ所ほどあるとみられるが、そのうち道幅や形状などである程度の条件を満たしたものが「 環状交差点 」として定義され、昨年の6月に改正された道路交通法によって通行方法のルールも整備されている。
環状交差点は円形交差点として「環道」を持つ平面交差で、各都道府県の公安委員会が設置する道路標識などで環道を右回りに通行することを指定した交差点とされる。交差点に進入した車両は環道を右回りに走行してから任意の道路へ左折して出ていくのだ。今月の改正道路交通法施行に伴って運用が始まった「環状交差点」なのだが、今年度内に 15 県の 49 カ所に増える見通しだという。従来の円形の交差点と異なり改正道交法に基づく環状交差点では進入車両に一時停止の義務はなく、「止まれ」から「ゆずれ」へと表示も変わっている。改正道交法では車両が環道を右回りで徐行すると規定し、交差点への進入時に一時停止する義務は課していないが環道を走行する車両の通行を優先する旨を定めている。
改正道交法の施行に先駆けて国土交通省道路局は 8 月 8 日、「望ましいラウンドアバウトの構造について」とする通知を各地方整備局などに発した。管内の都道府県や政令市を通じて、通知内容を市町村にも周知するよう求めた。 この通知は、道路管理者が環状交差点を計画・設計するための条件や留意事項についてまとめたもの。交差点に進入する道路や環道が 1 車線の環状交差点を整備することを前提として、適用条件や構造、案内標識の設置方法などを示した。適用条件では、交差点に流入する交通量が 1 日当たり 1 万台未満の交差点に適しているとしている。国土交通省では有識者などで構成する「ラウンドアバウト検討委員会」を設置して技術的な課題を検討し社会実験も実施している。
実験の対象は長野県軽井沢町の六本辻交差点などだが、いずれも交通量もそれほど多くないうえ「環道」への進入路に一時停止線を設けて事故防止に努めたことから、利用者からは信号待ちがなくて便利になったなどの一定の評価を受けたそうなのだ。六本辻交差点と関方交差点は長野県公安委員会から環状交差点の指定を受け運用を始めている。ただし六本辻交差点の進入路には一時停止線を残しており、長野県警察本部によれば六本辻交差点は環道の直径が小さいことなどから、しばらくの間は一時停止規制を残すというのだ。規定での「車両」には自転車も含まれるため、走行しながら右折するには自転車であっても環道を右回りにぐるりと 4 分の 3 周しなくてはならないのだ。
典型的なラウンドアバウトには信号がないので、信号の設置費用・メンテナンス費用を考えればその分だけラウンドアバウトが有利である。ただしラウンドアバウトの場合は十字の交差点には見られない中央島を設置する必要があって、これに植栽を施すことはよく行われるが植栽を行えばその定期的なメンテナンスが必要となるのだ。また信号が必要でないとしてもラウンドアバウトのために照明を増やすことにすれば照明のエネルギー費は増え、建設コストに大きく影響する要素の一つとして必要な用地の大きさを挙げることができる。交差点の道路が交わった箇所だけを考えればラウンドアバウトの方が広い用地を必要とするとはいえるが、単純にどの形式の交差点が必ずコストの面で有利であるとはいえないというのだ。
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