石油輸出国機構はウィーンの本部で定時総会を開き、一部加盟国が需給引き締めに向けて原油生産量の上限の設定を模索したが、増産を続けたいイランとの溝が埋まらず合意に至らなかったという。4月のドーハ会合に続いて協調態勢の構築が不調に終わり、石油輸出国機構の機能不全が一段と鮮明になっているとの報道がされている。石油輸出国機構は生産量が上限を超え形骸化していたため昨年12月に、日量3000万バレルの生産上限を取りやめ事実上各国の裁量に委ねる体制に移行していた。ところが足並みの乱れを突かれて原油価格は2月に一時1バレル=20ドル台まで急落したことから、てこ入れを求める一部加盟国が上限復活を求めサウジアラビアも支持していたのだ。
それを今年の1月に経済制裁が解除されて以降増産を続けるイランが反対したというのだ。石油輸出国機構は中東やアフリカに南米などの13カ国が加盟しており、米欧の国際石油資本から産油国の利益を守ろうと設立されたという。原油価格を安定させるため生産目標を決め供給量を調整してきたのだが、世界の原油生産量の約4割と埋蔵量の約7割を占め、「世界最大のカルテル」とも言われているのだ。イランのザンギャネ石油相は石油輸出国機構の会合前上限設定は、イランの大幅増産を認めることが前提との考えを示していたし、サウジのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は会合後「以前のような市場管理には戻らないだろう」と価格影響力の低下を認めていた。
サウジやカタールは4月にドーハで開いた会合でもロシアなど十数カ国と、生産量を1月の水準のまま凍結する生産調整を模索したがイランが拒否し合意に至らなかったのだ。国際原油価格は最近1バレル=50ドル近くまで回復したが、ベネズエラなど財政悪化にあえぐ加盟国からは価格下支えのため協調を求める声が強かったという。この原油価格が我々の生活にどのような影響を及ぼすかというと、安倍政権が消費税増税を再び延期したのは消費の低迷など景気の足踏み状態が続いていることが背景にあって、安倍首相は「アベノミクスの加速」を宣言したもののその効果には限界が見え始めており、に再増税できるような「強い経済」の実現は見通すことができない状態になってしまっているのだ。
安倍政権は発足当時にはデフレ脱却に向け大胆な金融緩和や機動的な財政政策等の「三本の矢」を掲げ、当初は円安・株高の進行や企業業績の改善など大きな成果を上げたと自身で語っているが、「デフレ脱却からのチャンスを手放すわけにはいかない」として更なるアベノミクス推進を訴えている。しかし経済成長はプラスとマイナスを繰り返し低空飛行が続いたいるいぇに、物価上昇率は原油価格の下落もあって今年4月はマイナスに落ちこむなど、デフレ脱却も見通せない状況にいたっているのだ。安倍首相は記者会見で新興国経済に問題があると繰り返し、「アベノミクスは順調に結果を出している」と強調した。しかし増税できるような経済環境を2度にわたり整えられなかったのだ。
そこで「アベノミクスの限界」を指摘する声は強まりつつあって、企業業績は依然好調だが賃金や設備投資の伸びは限定的で、安倍政権が目指す消費拡大への好循環は機能しないままとなっている。しかも構造改革など成長戦略の推進は不十分で成長力を大きく底上げするには至っておらず、頼みの日銀の金融政策についても今年2月のマイナス金利導入後に円高・株安が進むなどその効果は不透明感を増している。原油の単価が上がらなければ新興国経済の減速は長期化する恐れもあり、アベノミクスがこのまま目立った成果を上げられなければ3年後の再増税も困難になるだろう。原油を増産しなければ新興国経済の減速は長期化するだろうし日本経済は大きな混乱に陥る恐れもあるというのだ。
キーワードサーチ
コメント新着