次期学習指導要領を審議してきた文部科学相の諮問機関である中央教育審議会の特別部会は審議まとめ案を公表したそうなのだが、小学校の授業時数は中学年と高学年の外国語教育の強化で140時間増えて計5785時間となり、授業時数を大幅に減らし学力低下を招いたと批判された「ゆとり教育」前の水準に回復する見通しだという。高校では日本と世界の近現代史を融合的に教える「歴史総合」の新設など大幅な科目再編案が盛り込まれたそうで、公立高の地理歴史・公民科教諭は「従来は選択必修で選ぶ生徒が少なかった地理が必修になり、全員が学ぶのは良い」と評価する一方で、「これまで日本史・世界史の担当教員は分かれていたのが、歴史総合の授業は最初からは困るかも」と漏らしたそうなのだ。
次期学習指導要領について検討している中央教育審議会の高校部会などは高校で導入する新科目の構成案をまとめており、地理歴史科は日本と世界の近現代史を関連付けて学ぶ「歴史総合」と「地理総合」となり、公民科は主権者教育を含む「公共」を必修化し「現代社会」は廃止するという。中央教育審議会は8月中に詳細を詰めた上で年内にも答申をまとめ、文部科学省が今年度内に学習指導要領を改定する予定なのだが、新指導要領の全面実施は小学校が32年度で中学校が33年度からとなり、高校は29年度改定ということで実施は34年度からとなるという。「能動的な学び」を掲げた次期学習指導要領案に現場からは、「方向性はいいが具体的にどうしたらいいか分かりにくい」といった声が聞かれたそうなのだ。
審議まとめ案では基本方針について人工知能の飛躍的な進展など将来予測が難しい中、伝統や文化を重んじ未来を創り出していくための必要な資質・能力を確実に育むと明記されているそうで、具体的には論理的な表現力の弱さがなお課題だとし、言語能力の強化を重視するとしているという。また「学校で何年も英語の勉強をしたのに外国人と話すことができない」こんな声が根強い中、次期指導要領は英語教育について「コミュニケーション能力の育成」の重要性を前面に押し出すという。小学校では高校卒業段階で英検準2級から2級程度以上の割合を5割以上とする国の目標を踏まえ、5・6年で年間35時間ずつある現行の外国語活動を教科型学習の「外国語」に格上げするというのだ。
それぞれ年間70時間とする方向だというが、外国語活動は3・4年に前倒ししそれぞれ35時間ずつとするようなのだ。小学校では英語が 5 ・ 6 年で教科化され、 3 ・ 4 年の授業でも導入されるということなのだが、静岡県内の公立小の女性教諭は「今でも英語の授業に負担感を持つ教員もいるのに、専科教員の配置などの配慮がないまま教科化されるのだったら不安」と話しているし、東京都内の公立小の校長も「教員に英語の評価までさせるのはかなり心配」と明かしているというのだ。「大学入試が大きく変わらなければ、指導要領だけ変えても教育は変わらない」と語る大分県立高の 50 代の化学教諭は、現在進められている大学入試改革の行方を注目しているそうなのだ。
文科省の有識者会議は 3 月に現行の大学入試センター試験に代わる新たなテストを 2020 年度に始め、国語と数学に記述式問題を導入するなどとした最終報告をまとめているが、しかし出題範囲など詳細は決まっておらず、この教諭は「どんなテストになるのか、大学がどう活用するのかが分からないと、高校の現場は動きにくい」と言う。高校では歴史総合のほか選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられたことに対応し、主権者教育や社会保障などを学ぶ「公共」を新設しおり、国語では実生活での言語能力を育成する「現代の国語」と日本の言語文化への理解を深める「言語文化」を必修科目としている。学習指導要領改定のポイントとして「『ゆとり教育』か『詰め込み教育』といった二項対立的な議論には戻らない」と強調しているという。
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