政府 が発表した今年の4~6月期の実質国内総生産の1次速報値は、前期比0・048%増で年率換算は0・2%増だったそうなのだ。金融緩和や公共事業など政策効果に支えられて、かろうじて2四半期連続のプラス成長となったが、自律的回復のかぎを握る民間需要は力強さを欠いた状況のままだという。「貯蓄から投資へ」を標榜するアベノミクスの中で、「消費や投資をしない者が不景気を招いている」という「貯蓄悪玉論」が広がっている。ところがそうした空気に断固として抗う「老後貯金族」がけっこういるそうで、総務省の最新の全国消費実態調査によると個人預金の 5 割超を占める 60 歳以上の高齢者世帯の平均預金額は 1351 万円となっており、前回調査時の5年前に比べると約 7 万円増えているというのだ。
貯蓄と言えば銀行なのだが、三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行・三井住友信託銀行は9月契約分の住宅ローン金利について、低金利政策の中で当初10年固定の最優遇金利を5カ月ぶりに引き上げるというのだ。このところの長期金利上昇を受けた動きだというのだが、10年固定の最優遇金利は三菱東京UFJ銀が0・10%幅上げて年0・60%とし、みずほ銀は0・05%幅上げて年0・70%で三井住友信託銀は0・10%幅上げて年0・45%にするそうなのだ。各行は15年以上の固定金利も、10年固定と同程度引き上げるそうなのだ。住宅ローンの固定金利は長期金利をもとに決まるわけなのだが、長期金利の指標となる満期10年の新発国債の流通利回りは7月に過去最低をつけたが、その後マイナス幅が縮んでいるという。
短期プライムレートを参考に決める変動金利は各行とも変えない方針だというが、住宅ローンの金利といえば将来的な変動リスクがある「変動型」と金利が変動しない「固定型」の 2 タイプあって、変動型の金利が低く固定型の金利が高いというのが従来の常識だったのだ。それが今年 2 月に日本銀行がマイナス金利を導入したことで覆されつつあると言われ始めている。主要行の住宅ローン金利を見ると「変動型」では三菱東京 UFJ ・みずほ・三井住友の 3 メガバンクが「 0.625 %」で、りそなが「 0.625 %」になっており、三井住友信託が「 0.6 %」となっているが、「 10 年固定型」では三菱東京 UFJ が「 0.5 %」で、三井住友信託が「 0.35 %」などと固定が変動を下回る逆転が起こっているというのだ。
固定型は長期金利にほぼ連動しその指標となる 10 年もの国債の利回りはマイナスとなっており、それが反映されて引き下げられた格好なのだが、変動型は銀行の企業向け融資の際に業績好調などの理由から適用される最優遇貸出金利のうち、 1 年以内の短期間のものを基準にして半年ごとに利率が見直されるが、その水準は銀行側の事情によるところが大きいからだというのだ。すでに短プラは空前の超低金利下にあってそれを収益源とする銀行側としては「これ以上は下げたくない」のが本音であるため、変動型よりも固定型の方が低くなっているというのだ。そのような事態を受けて銀行の窓口も一変しており、昨年までは住宅ローンを組む際変動型を選ぶ顧客が 7 割を占めていたというが今やそれも逆転しているそうなのだ。
新規では固定型が過半を占め借り換えに至っては 7 割強が固定型を選ぶようになっているといわれており、「少しでも低い金利を求めて変動型を選ぶ」という住宅ローン選びの常識も変わりつつあるようなのだ。ただし、「今の金利が低いから」というだけで固定型を選択するのには注意も必要で、ファイナンシャルプランナーの藤川太氏は「現在、銀行が前面に打ち出している 10 年固定というのは、ベースが変動型で当初 10 年間は固定にする期間優遇タイプにすぎません。そのままローン返済を続けていた場合当初 10 年間では有利になったとしても、その後は不利になる」というのだ。マイナス金利で「借り換えの絶好のチャンス」と安易に飛びつくのは避け慎重に考えるべきだとアドバイスしている。
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