安倍晋三首相は皇室制度の見直しに関しては天皇陛下の生前退位の問題に絞り、女性天皇や女系天皇だけでなく女性宮家創設の検討についても否定的な見解を明らかにしている。安倍首相は今生陛下が生前退位をにじますお気持ちを表明されたことについて、「陛下のご心労に思いを致し、どのようなことができるか考えたい」と表明しているが、女性天皇などに関しては「今回は天皇陛下のご発言があったわけで、それに対する国民の反応がある」と指摘し、検討対象からは外れるとの認識をにじませたという。安倍政権は高円宮家の次女典子さまのご結婚を機に休眠状態だった皇室典範改正準備室が活動を再開し、参院選の終了を待って女性皇族減少への対策を本格検討する予定だったというのだ。
安倍首相と意見が異なる自民党の二階俊博幹事長は、女性天皇に関し「女性尊重の時代に天皇陛下だけそうはならないというのはおかしい。時代遅れだ」として容認する見解を示しているのだが、二階俊博幹事長は記者団に「諸外国でもトップが女性である国もいくつかある。何の問題も生じてない。日本にもそういうことがあってもいいのではないか」と語っている。二階俊博幹事長も天皇陛下がお気持ち表明で強くにじませた生前退位については、「首相の責任でこの問題を処理するのがいいのではないか」と述べ、野党を含めた政党間で議論することに否定的な考えを示しており、女性天皇や女性宮家実現に向けた検討をするかどうかに関して「一緒にやれればいいが、やれなければ切り離して考えればいい」と語っている。
これまでも皇室活動を安定的に維持するため政府は、過去にも皇室典範改正を含む制度の見直しを検討してきたそうで、2005年には小泉内閣が男性皇族の減少に危機感を持った小泉純一郎首相が私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」を設置し、男系男子に限られている皇位継承の在り方の再検討に着手している。そして「女性天皇」や母方が天皇の血筋を引く「女系天皇」を認める最終報告書をまとめ、自民党の保守派や皇室関係者等多くの反対派が避難する中で、皇室典範改正準備室を設置し改正案の策定に取り掛かっていたのだ。ところが翌年の9月に秋篠宮家の長男悠仁さまが誕生されたことで、女性天皇や女系天皇を設置できる皇室典範の改正に向けた動きは頓挫したのだ。
旧民主党政権下では野田佳彦首相が皇族減少問題を喫緊の課題と位置付け、議論を再開して女性皇族が結婚後も皇族の身分にとどまる「女性宮家」の創設に関して有識者の意見を聴取したのだ。この時も「女系天皇につながる」との慎重論も多く、論点整理は結婚した女性皇族が国家公務員として皇室活動を継続する案も併記する形となったそうなのだ。これに対する意見公募を行った結果寄せられた26万件超の大多数が反対意見だったそうなのだが、明治以前の歴史を振り返ると推古天皇をはじめとする女性天皇は 8 人おり、別に女性天皇が即位してもおかしいことは何もないということだったのだが、その後政権交代に伴い検討作業は中断し保守派の反発や政権交代などでいずれも立ち消えとなっている。
これまでも女性天皇はあったがあくまでもそれは一時的な存在で、間違っても女系天皇は認められないというのが大勢を占め、日本は神武天皇以来、 2000 年も男系の伝統が続いているが女系天皇を誕生させると、その伝統を変更することになり皇統(天皇の血統)の正当性が失われるというのだ。昔は皇室で側室が後継者を生むことが認められていたが、今の婚姻制度は一夫一婦制なので天皇に例外を作らない限りそれは難しいとされている。そうなると男系男子の天皇を続けることは極めて難しく、男系にこだわると伝統を守ることなどできなくなるといわれている。今生陛下の「 2 年後には、平成 30 年を迎えます」というお言葉には、あと 2 年という十分な時間をもって議論を尽くしてほしいというお気持ちが表れているというのだ。
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