厚生労働省としても「過労死等の防止のための対策に関する大綱」に即して、過労死等がなく健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に向けて、各対策に取り組んでいるという事をアピールしているそうなのだ。その中でも「過労死等防止対策推進法」は、我が国において過労死等が多発し大きな社会問題となっていること及び、過労死等が本人はもとよりその遺族又は家族のみならず社会にとっても大きな損失であることに鑑み、過労死等に関する調査研究等について定めることにより、過労死等の防止のための対策を推進し過労死等がなく仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与することを目的として制定されているというのだ。
私の所属する建設業では「低賃金・重労働」という事が有名となっているのだが、東京都渋谷区の建設コンサルタント会社に勤務していた男性が、昨年 7 月にくも膜下出血のため死亡した件で遺族代理人は、長時間労働が原因だとして渋谷労働基準監督署から労災認定されたことを明らかにしたというのだ。被害者の代理人である川人博弁護士によると、男性は昨年 6 月以前の 1 年間に 100 時間以上残業した月が 6 カ月あり、なかでも一昨年の 8 月は 250 時間近くに達していたというのだ。男性は主に下水道設計を担当する中堅社員で、当時の肩書は「課長代理」だったというが、川人弁護士によると建設コンサルタント会社は地方に支社や支店を置く社員 300 人程度の中堅の建設コンサルタント会社だというのだ。
男性は本社設計部門で 10 人程度の規模の課に所属していたそうで、発注者である自治体や公的機関と協議するため自ら地方に出張することも多かったという。老朽水道管の補修等の補正予算対応で、昨年の 2 月以降に担当した設計業務は 18 件あったそうなのだ。直近の社内健康診断では重大な疾病は認められなかったというが、昨年の 7 月勤務中に床に倒れて病院に搬送され 5 日後に死亡したというのだ。遺族は 12 月に労災を申請し今年の 7 月に過労死の認定を受けたという。 これらが起こった一番の原因は「納期絶対主義」によるものだとされ、人が病気になろうが過労で死のうが納期をずらす事を絶対にしないというのが、今の日本では当たり前のように起こっていると警告している。
過労死弁護団全国連絡会議幹事長として過労死問題に取り組んでいる川人弁護士は今回の問題について、「過労死等防止対策推進法」が施行された後にもかかわらず発生したことや、男性が設計実務者にもかかわらず社内で経営者と一体的な立場の「管理監督者」に位置付けられ適正な時間外労働賃金を支給されていなかったことの二つを問題点として挙げており、特に「みなし管理職」に関しては建設コンサルタント会社の労働基準法違反の疑いがあるとして告訴も考えているそうなのだ。川人弁護士はさらに第 3 の問題点として公共事業の発注者である国や自治体の責任を指摘しており、国や自治体が受注側の労働実態を考慮せず無理な納期設定を行っていることを非難している。
国は過労死防止法に基づいて閣議決定した過労死防止大綱に「発注条件・発注内容の適正化」を盛り込んでいるにもかかわらず、国や自治体が受注側の労働実態を考慮せず無理な納期設定を行っていることが今回の件の背景にあるとしているのだ。厚生労働省が定めた過労死ラインを越して働いていても何の歯止めもなく死ぬまで放置されたのがこの事案で、過労死ラインを超えて働かせている事が判明した地点で、強制的に残業を止める必要があったにもかかわらず納期を理由としてそれがなされなかったというのだ。男性が勤務していたとみられる建設コンサルタント会社は「管理監督者に位置付ける社員を絞り込む方向で見直した。ノー残業デーの設定や休暇取得の推進などにも取り組んでいる」とコメントしたという。
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