「年金」・「医療」・「介護」・「子育て」・「労働問題」など日本におけるコアの問題のほぼ全てを抱える巨大官庁が厚生労働省なのだが、悪化する日本の財政問題を考える際には厚生労働省が抱える社会保障問題を解決しなければならないという。アベノミクスで描く改革がなかなか実現できない背景には、既得権層を背後に持つ霞が関の官僚の抵抗が大きい。中でも改革に最も抵抗している「岩盤」が厚生労働省だという。医療制度改革や健康保険改革の背後には、日本医師会などの政治力の強い団体がある。年金も、日本年金機構(旧社会保険庁)などの巨大な“官僚機構”を抱え、役所の権力基盤になっている。労働規制の背後にはもちろん労働組合などの権益が存在する。
そこで厚生労働省は安倍晋三首相が第3次再改造内閣での「最大のチャレンジ」と位置付ける「働き方改革」に対応するため、関係部局の大幅な組織改編に着手する方針を決めたそうなのだが、働き方改革に特化した「雇用環境・均等局」の新設が柱で、来年度の機構・定員要求に保健医療政策の司令塔となる事務次官級の医系技官ポスト「医務総監」の創設とともに盛り込む方向だという。組織改編案では労働条件を担当する労働基準局だけでなく、雇用対策を推進する職業安定局や働く人のスキルアップを支援する職業能力開発局に、子育てや女性問題を担う雇用均等・児童家庭局-の4局の所掌を組み直し、雇用環境・均等局など新たに3局を設置して5局に再編するというのだ。
厚生労働省の局が1つ増えることになるため働き方改革と関係のない局の廃止も検討しているそうなのだが、雇用環境・均等局は働き方改革を強力に推進するため、同一労働同一賃金の実現など非正規労働者の処遇改善や、女性活躍や均等処遇の推進だけでなく、長時間労働削減などワークライフバランスの実現のため、短時間・在宅労働の雇用環境改善を主な業務とし、現在の労働基準局や職業安定局などから担当課を移行させるという。生産性向上を推進する「人材開発局」も新設する予定で、若者の就労支援・人材育成・福利厚生の3本柱に沿って職業能力開発局を事実上衣替えして、企業の人材部門に対する支援体制を強化する狙いがあるとされている。
さらに雇用均等・児童家庭局の子育て部門を分離し「子ども家庭局」を創設するというが、画期的なようにも見える厚生労働省の組織改革は問題含みであるという。最大の問題は法規制の中心のはずの労働基準局を避けていることでこれでは実効性に乏しいというのだ。そもそも同一労働同一賃金の実現や長時間労働削減は「労働条件」に関わることから、すでに労基法に関連する規制があって労働時間の上限や男 ... もっと見る 女の賃金差別禁止は、現在も労基法で罰則付きで規定されているのだ。だが実際には抜け穴となる条文( 36 条の協定など)が存在することで空文化されてきたのだ。これに対し民事裁判例は長時間労働による過労死の責任や、賃金差別に対して厳しい判決を下してきたのだ。
つまり労基法の厳しい実行が求められているのだが政府の姿勢は「補助金」による改革で、労働時間改革を行った企業に補助金を出すことをすでに打ち出しているのだ。これまでの補助金による政策は空振りばかりなのが実情だという。そのうえ安倍内閣はいろいろと改革をやろうとしている。それにことごとく抵抗していたのが厚生労働省の役人です。会議に大臣が分厚い資料を持ってきて、改革論議が出るたびに、それはこういう理由で難しいと、役人が作ったペーパーを大臣が読み上げる。最大の問題官庁や」厚生労働行政に詳しい関係者によると、厚労省の幹部の中には、「安倍内閣発足以降、わが省は全戦全勝だ」と公言しており、それぞれの専門分野に浸った官僚が牛耳る改革志向とは縁遠い組織だというのだ。
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