建設投資が底を打って反転して以降は建設会社各社の好業績が続いているというが、私の愛読している業界紙では毎年 9 月に建設会社の決算ランキングを特集しており、ここ数年は増収や増益といった言葉が見出しに踊っているというのだ。日本の建設投資はピークだった 1992 年度の 84 兆円から減少傾向が続き 2010 年度には 42 兆円と半減したのだが、その後は震災復興や安倍政権の経済政策によって反転し最近では 50 兆円弱まで盛り返している。建設会社の決算も当然のことながら建設投資に連動しここ 3 年で急速に回復しており、昨年度 3 月に迎えた決算期の建設大手各社の決算は好調ぶりが際立っているが、好業績のなかにあって各社が浮かれているように見えないのもここ数年の印象だというのだ。
そのうえ多くの建設会社が次期の業績予想を少なめに見積もっていて、増収増益だからといって大風呂敷を広げるような話も聞こえてこないという。最近の好業績を支えてきた震災復興関連事業でも震災から 5 年目を迎えやや陰りが見えてきており、今回の業界紙の調査でも回答者の 9 割以上が次期決算期において、復旧・復興に関する受注高は「増加しない」と考えているというのだ。とはいえ建設業界には好材料もまだまだ多くあるようで、首都圏では東京五輪に向けた首都圏のインフラ整備をはじめ大型工事の発注ラッシュが続き、首都圏 3 環状道路やリニア中央新幹線に高速道路の大規模更新など、ゼネコンと呼ばれる大手建設会社が注目する工事が目白押しだというのだ。
一方で大規模な事業に伴う周辺工事や高速道路の修繕などは、小規模な会社にも手掛けるチャンスが大いにありそうで、業界紙の調査に対して回答があった会社の決算を眺めると前期と比べて単体の土木売上高は 56 %が増加し、土木の完成工事総利益率も 62 %が上昇と好調ぶりがうかがえるというのだ。それに対して次期の見通しとなると土木売上高や土木の完成工事総利益率ともに、半数以上の建設会社が横ばいとみているというのだ。明るい見通しの中でその先を見据えた手を打ち始めている建設会社も多く、そうした将来に向けた投資についてもさらなる受注を目指して新組織や新会社を立ち上げる企業もあれば、人材を確保するための待遇改善に力を入れているところもあるというのだ。
しかも処遇の改善が自社の社員だけでなく協力会社の優秀な社員を優遇する動きがこのところ目立ち、やっと業績が良くなって「ほっと一息」というのが本音だと言われているのだ。しかし先の民主党政権時代がそうだったように建設投資が一気に減る可能性はゼロとは言えず、業績のいい今のうちにどれだけ将来に向けた投資ができるのかなどは、景気が悪くなった時に大きな差になって表れてくるというのだ。かつてバブル時代に高収益を上げた建設会社の中には過剰な不動産投資などで大きな痛手を被ったところもあり、それ以来の好業績とも言われている昨今だが各社の取り組みは地に足の付いたものとなっており、新卒採用・中途採用ともに増やすなど企業の「体幹強化」を目指しているというのだ。
建設業界の好調を支えている公共事業の増加基調が長続きしないことは明らかで、業界紙の特集記事でも業績好調のいまこそかつて描いていたように、成長分野への足がかりを築いておくことが求められるとしていたのだが、その一つの表れが人材の採用や育成についてだというのだ。女性や外国人の採用を増やす会社も多く土木系以外の学部・学科から土木職の人材を採用する方針の会社も出てきているそうなのだ。多様な人材を採用し戦力としてじっくり育てていこうという姿勢が多くの会社から感じられるようになってきており、即効性は小さいかもしれないが人への投資は会社の体力強化に欠かせないことから、利益率が高い今こそ人材育成に力を入れるべきだというのだ。
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