厚生労働省は水道施設の老朽化対策を目的に、点検や修繕を自治体などの水道事業者に義務付けるよう水道法を改正する考えで、人口減少による事業環境の悪化に配慮して施設の更新費用を水道料金に上乗せできるようにするという。厚生労働省の専門委員会で改正の方向性を明らかにしたそうなのだが、検討しているのは学識者などで構成する「水道事業の維持・向上に関する専門委員会」で、会合では水道事業者による水道施設の点検実態の調査結果を公表し、巡回時の目視などによる日常点検の実施率は比較的高いが、劣化状況の把握や修繕の検討などに必要な定期点検については厳しい結果が出たというのだ。特にコンクリート構造物の定期点検は 90 %を超える事業者が実施していなかったという。
インフラ老朽化問題が深刻化するなか改正下水道法が今月に全面施行され、下水道管などの排水施設を 5 年に 1 回以上点検することが自治体に義務付けられている。「水道事業の維持・向上に関する専門委員会」はこうした状況を踏まえ、水道施設の老朽化対策や耐震化のために下水道や河川などほかのインフラと同様の維持管理を、水道事業者に求める報告書の骨子案を提示しているそうなのだ。このことは年内に報告書を取りまとめる予定だそうで、これを受けて厚生労働省が水道法の改正案をまとめ、早ければ来年 1 月の通常国会に提出する予定だというが、改正案では水道事業者に対して、水道施設を良好な状態に保つように点検や維持・修繕を義務付ける見込みとなっている。
コンクリート構造物については 5 年に 1 回といった頻度で、劣化状況を近接目視などで点検することとすることにしているが、人口が減っていくなかで水道事業者が水道施設の維持管理や更新を進められるように、将来の更新需要も視野に入れて水道料金を設定できるようにするというのだ。この改正案では水道施設の維持管理の効率化という観点から官民連携を推奨するというが、その一環として事業の運営権を民間事業者に売却する「コンセッション」が導入しやすくなるように制度を整えていくという。厚生労働省水道課によると委員会ではコンセッションを巡って様々な意見が交わされており、大規模な自然災害が生じた場合に最重要のライフラインである水道の災害対応を民間事業者に負わせるのは酷だとする指摘もあったという。
連携する官民の役割分担や責任の範囲の明確化が焦点の一つになる見込みで、国土交通省は下水道法や日本下水道事業団法の改正を視野に、これまでの新設中心の下水道政策を大きく見直していくという。日本下水道事業団は自治体から委託を受けて下水道の未整備地域で本管や枝管に関連設備を、面的に整備する事業に乗り出すそうなのだが全国での初弾として今年度から、三重県桑名市からの委託事業に着手する予定となっている。もっとも上下水道のコンセッション方式導入に向けて条例改正案を提出したが、桑名市議会の定例会で否決されているそうなのだ。大阪市でも条例の改正案を市議会に諮ったが継続審議となっており、いずれも収益改善の見通しが不透明であることなどが理由だという。
国や地方自治体が公共施設の所有権を維持したまま運営権だけを民間に売却する仕組みを検討しているようだが、民間資金を活用した社会資本整備道路は生活に必要不可欠であるため安定して稼ぎやすいとされている。今後関心を集めるのは道路よりもさらに安定した収益が見込める上下水道で、浜松市が下水道事業について来年の 4 月からのコンセッション導入を目指しているほか、大阪市や広島県なども検討を進めているという。こうした動きは水道事業の官民連携で実績のある企業にとって追い風となりそうで、公共施設の新たな民営化の手法として運営権を民間に売却するコンセッション方式に注目が集まるなか、上下水道分野では議会の壁に阻まれて足踏み状態が続いているともいわれているのだ。
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