老朽化が進む一方で管理がままならないマンションが増えているが、空室の増加や管理費の滞納などが原因で荒廃する管理不全マンションが各地で目立ち始めたという。放置すれば周囲にも悪影響を与えるとして自治体は危機感を強めており、専門家を派遣するなどして住民を手助けする動きも出てきたという。ある大手新聞社が都道府県や人口20万人以上の市区など計178自治体にアンケートしたところ、過去5年間で49自治体が分譲マンションの実態を独自に調査したところ、所有者でつくる管理組合すらないマンションが少なくとも671棟に上ることが分かったという。また老朽化の目安の一つとなる築30年以上のマンションは今後10年で倍増すると見込まれているというのだ。
大手新聞社が都道府県や人口20万人以上の市区など計178自治体に行ったアンケート回答した自治体の約8割が、「管理不全マンション」の急増で治安や防災上の懸念を抱いている実態が浮かんだというのだが、26自治体で管理組合のないマンションが確認され、東京都が512棟と突出して多く北九州市が38棟で、千葉県の21棟が続いているそうなのだ。管理組合は区分所有法で設置が定められている組織で、マンション内のルールを決めたり管理費や修繕費を各所有者から集めたりと、良好な共同生活を保つ役割を担い管理組合が機能しないと、いずれ管理不全に陥る可能性が高いとされている。マンションの管理状況は外部から確認しづらく全体像の把握が難しいため、専門家は「実際はもっと多いはず」と指摘している。
都道府県と道府県庁所在地に人口20万人以上の市と東京23区の計178自治体にアンケートし173自治体から回答を得たているが、その結果では2011年度以降に49自治体が分譲マンションの実態調査を始め、23自治体はアンケートの配布や回収のために直接マンションを訪問しており、17自治体は現地調査を行っているという。日々の清掃や管理人の人件費などに充てる管理費を徴収していないマンションなのだが、調査に応じたのはマンション全体の全体の17%でしかなく管理不全物件はさらに多いとみられるそうなのだ。定期的な修繕に必要な修繕積立金を未徴収のマンションも21自治体で720棟あり、管理不全マンションの増加を「心配している」・「将来が心配」と答えたのは8割近い133自治体に上ったそうなのだ。
国の推計では分譲マンションは全国に約12万8千棟余あるとされているが、管理組合がないと確認されたのは200棟に1棟の割合となっているそうなのだ。マンションの実態に詳しい京都工芸繊維大の鈴木克彦教授は「問題の多いマンションは調査に応じないので実態はもっと深刻だろう。売却しづらい地方都市では既に管理不全が広がっている。今後は一気に進行する恐れがあり、国や自治体は早急に支援策を検討する必要がある。所有者も管理の大切さを自覚すべきだ」と指摘している。マンションとは鉄筋コンクリートなど非木造の集合住宅で、英語の意味は「大邸宅」とされ、関東大震災後に東京や横浜に建てられた「同潤会アパート」が草分けとされており、全国に約623万戸で日本人の9人に1人が暮らす計算だという。
建物と住民の「二つの老い」が管理不全マンションを生む要因となっているが、東京都の住宅政策審議会は昨年の実態調査のデータも踏まえ、管理不全マンションを把握して支援するよう答申している。その中でも「手をこまぬいていれば確実に増加し、周辺の治安や衛生にも悪影響を及ぼす」と警告しており、マンションが自治体に管理状況を定期報告する制度をつくるよう促しているという。この答申を受けて東京都は報告がなければ立ち入り調査できる仕組みも検討しているが老朽化マンションは今後急増し、60歳以上だけで暮らす世帯の割合が52%を占めるまでになるというのだ。そして住民の高齢化は管理組合役員のなり手不足や空室の増加につながるとされている。
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