米大統領選でトランプ候補が勝利した後の高揚感的な「トランプラリー」の中で、株高・債券安とともにドル高が大幅に進み 11 月末時点で、けっこうの円高傾向になっている。そうしたあわただしい動きの中で閣議後記者会見での、為替相場に関する麻生太郎財務相は米大統領選でのトランプ氏勝利に伴う円相場の乱高下について、「 1 ~ 2 日で 5 円も動くのは異常だ。乱高下が少なく、安定しているという状態が一番だ」と述べ荒い値動きをけん制したそうなのだ。また「米国がドル高を嫌っていたのは大統領選挙の 11 月 8 日までは感じていた」とも明かし、大統領選でトランプ候補が勝利して米国民の保護主義への傾斜が明確になる中で、次期政権の動向を見極める姿勢を強調した発言したというのだ。
麻生太郎財務相は「いずれにしても為替というのは安定していることが重要なので、円が円高になりますとかそういった意味では、為替っていうのは急激に乱高下する。ボラティリティー(変動率)とか乱高下するということが望ましくないと思っています。米国の場合はドル高になるのをえらく嫌っていたのは 11 月 8 日までは間違いなく感じていましたけども、それ以後は株価がめちゃめちゃ乱高下したのは日本の東証で、米国はあまりそんなに下がったりしませんでしたからね。私らから見ると、 1 日で 5 円も動くのは異常だと思いますけども、乱高下せず安定していることがいちばんなのでしょうね」と語り、市場の一時的な変動を均して落ち着かせるための介入も視野に入れていることを示唆したそうなのだ。
たしかにオバマ政権が「ドル高を嫌っていた」という話は、ルー米財務長官の度重なる発言や米財務省が議会に提出した為替政策報告における日本についての記述内容から市場の関係者も推測していたそうなのだが、たとえそれが「スムージングオペ」と呼ばれる市場の一時的な変動を均して落ち着かせるための介入であっても、日本の政府当局による円売りドル買い介入を米財務省は容認しないというかたくなな姿勢をとってきていたというのだ。オバマ大統領は年明けの新議会開会前に最後のお仕事として、環太平洋パートナーシップ協定の議会承認を取り付けたいという強い思いがあり、議員たちを悪い方向で刺激する恐れが大きい日本の円売り介入はやめてほしいということだったのだといわれていた。
ところが大統領選でトランプ候補が勝利して米国民の保護主義への傾斜が明確になる中でそうしたシナリオは消滅してしまい、マコネル共和党上院院内総務は記者会見で、環太平洋パートナーシップ協定法案の「年内の採決はまずない」と言明したというのだ。環太平洋パートナーシップ協定や他の貿易協定に関する決定はトランプ次期大統領に委ねられると述べ、米メディアもオバマ政権は任期中の環太平洋パートナーシップ協定の議会承認獲得を断念したと報じたそうなのだ。こうした情勢変化はオバマ政権が日本の円売りドル買い介入実施に反対する理由がなくなったことを意味しており、したがって来年 1 月にトランプ政権が発足するまでに急激な円高ドル安が起こった場合は、日本が円売りドル買い介入を実施するというのだ。
トランプ次期政権の為替政策がどのようなものになるかが明らかになるより前に、対主要通貨や対新興国通貨ともに為替市場ではドルの上昇余地を試す動きが展開されており、大幅なドル高を放置すると、レーガン米大統領の経済政策である「レーガノミクス」がドル高・「双子の赤字」で失敗した轍を踏むことになりかねない上に、新興国からの資金流出加速を通じて世界経済を不安定化させるかもしれないとの危惧もあるというのだ。今回のドル高の持続性には疑問ありとされ、ドル安方向に大きく揺り戻す場面がいずれ見られるとさえいわれている。円高ドル安につながりかねないアクションを政府や日銀がとるとは考えにくく、日銀のアクションによって国債各年限の利回り上昇は今後も押さえこまれる可能性が高いといわれている。
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