医療費の増加が止まらないとされ厚生労働省の発表によると、一昨年度に国民が医療機関で治療を受けるのにかかった「国民医療費」の総額は 40 兆 8071 億円と、前年度に比べて 7461 億円率にして 1.9 %増えて 8 年連続で過去最高となったという。そこで厚生労働省が検討する高齢者関連の医療保険制度の見直し案では、医療費の自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」で70歳以上の住民税が課税される年収約370万円未満の「一般所得者」の負担上限を引き上げるなど負担を重くするというのだ。また75歳以上の後期高齢者医療制度では扶養家族だった人ら約330万人を対象に、保険料の特例軽減を廃止し段階的に引き上げることも検討されているという。
政府・与党内で最終調整を進め一部を除き来年度から実施する見込みだが、後期高齢者医療制度では74歳まで専業主婦ら扶養家族だった人の定額部分の保険料の軽減措置を、来年度から9割を5割に縮小するというのだ。医療費が高額になった場合に公的医療保険制度は更なる補助をしてくれるのだがそれが「高額療養費制度」なのだ。この制度は医療費の自己負担額が月あたりで限度額を超えた場合、その超えた金額を公的医療保険から支給する制度なのだ。その限度額は年齢や収入によって変わるのだが、ただし入院時の食費や差額ベッド代などは「医療費」に含まれない。また還付は通常 3 カ月以上先になるので一度は医療費の全額を自分で用意せねばならないとされている。
そこであらかじめ治療費が高額になることが分かっている場合は、事前に加入している公的医療保険の窓口などで「限度額適用認定証」を発行してもらうと、その証明書を医療機関に提出することで窓口では限度額の分だけを払えば済むようになるというのだ。高額療養費制度は月の初めから月末までを単位として医療費を計算することから、月をまたいで入院した場合は各月にかかった費用に対して限度額がそれぞれ計算されることに注意が必要だという。つまりもし月をまたいで入院し 1 月に 50 万円 2 月に 50 万円の医療費がかかった場合、各月の実質自己負担が 8 万 2430 円となり 2 カ月合計で 16 万 4860 円必要で、 1 カ月で済んだ場合の倍近い負担額となるというのだ。
公的医療保険の対象である治療いわゆる「保険診療」を受けるなら、自分で払う医療費の上限はほぼ決まっていることが分かるし、住んでいる地域や所属する保険組合によってはこれに追加して手厚い給付が出る場合もあるそうなのだ。このように「高額療養費制度」は患者が医療機関で支払った窓口負担の合計月額に上限を設け、超過分は公的医療保険から払い戻される仕組みなのだが、見直し案では70歳以上の「一般所得者」の入院負担上限を4万4400円から5万7600円に引き上げ、70歳以上が対象の外来受診のみの上限特例も年収約370万円以上の「現役並み所得者」の上限を4万4400円から5万7600円に、「一般所得者」も1万2000円から約2倍の2万4600円に引き上げるというのだ。
厚生労働省の試算ではこれで350億円の財源が捻出できる見込みだというが、外来の特例について「現役並み所得者」だけは廃止する方針だったが、与党内の慎重論に配慮し新たな所得区分を設けた上で廃止することを目指すことにしたそうなのだ。また厚生労働省は「医療費適正化計画」などを打ち出し医療費の抑制に努めているが、今年度も概算をベースにした試算では 42 兆円を超える見通しで医療費増加に歯止めがかかる気配はないという。このため厚生労働省は来年度の予算編成をめぐり増大する社会保障費を抑制するため、毎月の医療費の自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」を見直して、70歳以上の人の上限額を年収に応じて引き上げる案をまとめ国民負担を増やそうとしているのだ。
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