日本政府は来年に国連で始まる「核兵器禁止条約交渉」に参加することを決めたというが、10月の国連総会第1委員会で採択された交渉開始決議には反対したものの、被爆地広島出身の岸田文雄外相の意向もあって、交渉の場で日本の考えを訴えることにしたというのだ。外務省によると「核兵器禁止条約交渉」の決議に反対しながら交渉に参加するのは日本だけで、来月上旬の国連総会本会議でも決議が採択されると、正式に条約交渉入りが決まる見通しだというのだ。日本はこの場でも反対票を投じつつ投票理由の中で交渉参加の意向を明らかにする方向で調整しているそうなのだ。「核兵器禁止条約交渉」は核兵器を法的に禁止する内容でメキシコなどが提案している。
条約には「生物兵器」・「化学兵器」・「地雷・クラスター爆弾」等、これら非人道兵器は国際的に使用が禁止されている条約がある。しかし核兵器を禁止する条約はいまだ存在しないという。国連総会の軍食関係は第1委員会で審議されているが、核兵器を法的に禁止する「核兵器禁止条約」について来年から交渉を始めるとの決議を、123カ国の賛成多数で採択している。米・ロ・英・仏などの核保有国等の38カ国が反対し中国など16カ国が棄権しており、米国の「核の傘」の恩恵を受ける日本は、核の抑止力に基礎を置く国際安全保障のバランスが崩れるなどとして反対している。これから国連総会本会議で採択され核兵器の法的な禁止をめぐる本格的な議論が初めて国連で行われることになるというのだ。
米国は「第2次世界大戦後の安全保障体制を下支えしてきた長年の戦略的安定性を損ねかねない」などとして強い反対を表明し不参加を表明しており、国連総会の委員会で核兵器を法的に禁止する初めての条約制定を目指す決議の際に日本が反対している。この件で「日本原水爆被害者団体協議会」は外務省に対して、反対を撤回するとともに来月行われる国連総会の本会議では賛成に回るよう要請しているそうなのだ。要請のあと東京の参議院議員会館で開かれた集会で「日本原水爆被害者団体協議会」の谷口稜曄代表委員は「今、体調不良で入退院を繰り返しているが、再び被爆者をつくらないよう核兵器廃絶運動を続けいる。地球上から核兵器をなくすために、何としてでも条約の実現を目指したい」と訴えたという。
「日本原水爆被害者団体協議会」は核兵器の保有や使用を法的に禁止する条約の実現に向けて署名活動を進めていて、4年後の2020年までに数億人分の署名を集めることを目標としているそうなのだ。外務省への要請について「日本原水爆被害者団体協議会」の田中熙巳事務局長は「被爆者が直接抗議することに意味があると思い、要請を行ったが、外務省側からは『日本の方針を変えることはできない』という回答しか得られず非常に残念だ。私たちが現在進めている署名活動をきっかけに、日本も含め、世界中で核兵器廃絶の機運がより高まってほしい」と話している。外務省の関係者はこれまで文書に賛同しない理由について「核の非人道性の議論が、核軍縮のプロセスを分断するものになってはならない」と説明したという。
外務省幹部の言う「核軍縮のプロセス」というのは「段階的なアプローチが唯一の現実的な選択肢」とするアメリカやイギリスなど核保有 5 大国のやり方を指しており、外務省は核の傘については「社会においては、依然として核戦力を含む大規模な軍事力が存在している中で、日本の安全に万全を期すためには、核を含む米国の抑止力の提供が引き続き重要」としているというのだ。つまり米国の核抑止力が必要だと説明しているわけだが、今回の日本政府の対応について「国際 NGO ネットワーク」の核兵器廃絶国際キャンペーンは、「核兵器の恐怖を経験しているにもかかわらず、日本は核軍縮に向けた現実的なビジョンを説明することに失敗した」と厳しい指摘をしている。
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