今年に入ってから、ネット上ではトンカツ店で衣をすべてはがして残しカツだけを食べたお客の話が話題になり、寿司店でしゃりを残す女性が少なからず存在することが話題になったそうなのだ。さらにピザの具だけを食べてピザ生地を残すのはマナー違反かどうかまでネット上で議論されていたそうで、これは「糖質制限ダイエット」のおかげだという。こうした話題が度々ネット上で関心を集めること自体が、多くの消費者にとって糖質制限が無視できない存在感を持っている証拠なのだろうが、都会のラーメンチェーン店では麺を豚肉とタマネギ・モヤシに変更できる「つけ肉」を一部店舗で提供すると、ネット上でも話題を集めたことから現在 25 ある全店舗での取り扱いを目指しているという。
実は多くの飲食店にとって健康を重視したメニューに力を入れることは簡単なことではなく、通常のお客向けとは別に糖質制限などを行う健康志向の強いお客のための新たなメニューを開発することは、慢性的な人手不足に悩む中小飲食店の現場にとって大きな負担になるといわれている。また糖質制限を実践している消費者が必要とするメニューは、単価の高いハレの日の食事ではなく週に何回も食べられる日常食であることも問題なのだ。「カネ払いの良い消費者は首都圏の一部に限られる。地方では日常食に 1000 円を超える値付けは難しい」と外食業界のベテランコンサルタントは指摘しているが、もっともだからと言って手をこまねいていて良いわけではないとの指摘もあるという。
それは「消費者の健康志向は、ある意味で『国策』によって育まれてきた意識変化」のためだというのだが、その国策とは具体的には 2008 年から義務付けられている特定健康診査で、いわゆる「メタボ健診」のことだというのだ。 40 歳以上を対象に生活習慣病予防のためメタボリックシンドロームに着目して、病気のリスクを検査し保健指導を行っている。健康診断は年に 1 度実施されそれを受診させることは企業側の義務で、腹囲が男性なら 85cm に女性は 90cm 以上で血圧などの検査値に 1 つでも問題があるといった条件に該当すると、メタボリックシンドロームの予備群として保健指導の対象となるのだ。つまり嫌でも年に一度は健康を意識しなければならないのでダイエットに関心を持たざるを得ないというのだ。
そうした中で比較的取り組み易い糖質制限が注目されてきたというのが外食業界のベテランコンサルタントの分析なのだが、多くの人が「メタボ健診」で健康に興味を持つことは、健康関連のメディア情報を増やしさらに健康関連の商品を増やし、それがさらに健康への関心を高めていくことになるというのだ。長い目で見ればこうした流れにあがなうのは得策ではないというのだが、昨年にあるステーキチェーン店では、社員がステーキを 1 日 300 グラム食べ続ける糖質制限と同時に筋力トレーニングをすることで、 15 キロ以上の減量と肉体改造に挑戦する企画を行って見事に成功し話題になったそうなのだが、そこでランチタイムにステーキとライスのセットで「ライス無」を注文すると 100 円値引きをするサービスを実施しているそうなのだ。
また直営店舗では付け合わせのトウモロコシをブロッコリーやインゲンに変更できるようにもしたというのだが、これは糖質制限を実践する来店客への配慮からだという。その結果ダイエットに関心の高い人たちを中心に交流サイト上でその取り組みを絶賛されたそうなのだ。これまでのダイエットでは摂取カロリーを消費カロリーより少なくするのが基本のため、必然的に食べる量が少なくなることから空腹やストレスを感じることが多かったという。糖質制限ダイエットでは糖質の摂取量を減らすだけなので、糖質を含まないものであれば満足するまで食べても構わないとされており、糖質制限の本格的な拡大は見方を変えると、実は 1 万年ぶりに起こった「食」の大転換とも言えるそうなのだ。
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