安倍晋三首相は首相公邸で北方領土の元島民と面会し、山口県長門市と東京で行われるロシアのプーチン大統領との首脳会談を前に「私の世代でこの問題に終止符を打つ。この決意で首脳会談に臨みたい」と強調し、北方領土問題の前進に意欲を示したそうなのだ。反対にロシアのプーチン大統領は日本訪問を前に、モスクワにあるクレムリンの大統領府で大手新聞社のインタビューに応じ、日露間の懸案である北方領土問題について「国後・択捉・歯舞・色丹」の4島の帰属問題を交渉の対象とする日本の立場について、日ソ共同宣言の枠を超える行為だと批判的に述べたそうなのだ。安倍首相は経済協力をテコに交渉の前進を目指すが日露の立場は隔たったままだということが際立ったという。
プーチン大統領は「チャンスはある。パートナーである日本の柔軟性にかかっている」と述べ、平和条約の締結とその前提となる領土問題では日本側の大幅な譲歩が必要だとの考えを示したというのだ。安倍首相については「非常に信頼できるパートナー」と高く評価しているが、「共同宣言」は平和条約締結後に「歯舞」・「色丹」の2島を引き渡すと明記しているだけだという事を明確にしてきそうだというのだ。日本はこの2島に「国後」・「択捉」を加えた4島の帰属問題を解決し平和条約を締結するとの立場だが、プーチン大統領は4島の帰属問題の提起は「共同宣言の枠を超えている。全く別の話で別の問題提起だ」と述べ、受け入れられないとの考えを大手新聞社のインタビューで強調したそうなのだ。
プーチン大統領は安倍首相が提案した医療や極東開発など「8項目の経済協力プラン」については、平和条約を締結する「条件ではなく必要な雰囲気作り」との認識を示しており、「8項目の経済協力プラン」で経済協力が拡大しても平和条約交渉の進展と直結するものではないとの見解を示したといえそうなのだ。平和条約を締結する「条件」として日本に対し北方領土で「共同経済活動」を行うよう求める考えを示してはいるが、あくまでもロシアの主権のもとで認めると強く主張したそうなのだ。しかしながら日本政府はこれまで北方領土に対するロシアの主権を認めることにつながるとして、日本人がロシアのビザを取得して入域することや経済的な活動をすることを認めていないのだ。
日本企業には「できるだけ自由な条件を提示する」とも述べてはいるが、それでもロシアの主権のもとで日本企業に活動を認めるとの立場は譲らないというのだ。しかもプーチン大統領は「この2年で残念ながら、露日間の貿易が落ち込んだ」と制裁による打撃を指摘した。そして「貿易・経済面で最大のパートナー」で「大規模で巨額の共同プロジェクトをいくつも実現している」と中国を引き合いに出しながら日本に経済協力を求めたというのだ。ウクライナ情勢を巡り日本がロシアに経済制裁を続けていることについて、「制裁を受けたまま、どうやって経済関係をより高いレベルに発展させるのか」と述べ批判し、ウクライナ問題をめぐり日本が先進7か国の一員として対露制裁に加わっていることに不満を示したという。
ロシアのプーチン政権の高官も北方領土問題について「私たちが一歩を踏み出せば二国間関係が進むというのは順番が逆だ。信頼関係を深めることで問題解決の展望が開ける」と指摘しているそうで、さらに「今は日本の対ロ制裁が両国の関係発展を損ねている」と述べて、今回の首脳会談での打開は困難だという見方を示しているというのだ。そして「すぐに解決するかのような期待を持たせることは有害だ。事態を悪化させ、安倍首相の素晴らしい8項目の経済協力提案をだいなしにする。プーチン大統領がこの問題を踏み込んで検討することもできなくなる」と述べ、首脳会談では経済協力の実現を優先させる姿勢を鮮明にし、平和条約締結に向けた両国の共同声明は採択されないという見通しを示したそうなのだ。
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