愛知県警は官製談合防止法違反の容疑で国土交通省中部地方整備局の出先事務所の副所長と奥村組の元社員を逮捕したそうなのだが、中部地整では今年の 9 月にも別の出先事務所の課長が同様の容疑で逮捕されたばかりだったという。逮捕されたのは事件当時に中部地整道路工事課の課長補佐だった北勢国道事務所副所長と、奥村組名古屋支店土木部勤務だった元社員で、贈収賄の容疑もあるが元社員の贈賄容疑は公訴時効が成立している。愛知県警は両者の身柄を名古屋地検に送致している。不正があったとされるのは中部地整が公告した紀勢自動車道の古里第 1 トンネル工事の一般競争入札で、和歌山県紀北町にある古里第 1 トンネルは延長 560m でトンネルを含む区間は開通し供用されている。
紀勢自動車道の古里第 1 トンネル工事の一般競争入札は技術提案を伴う総合評価落札方式で 18 社が参加し、奥村組の入札価格は高い方から 4 番目の 12 億 4600 万円(税抜き)だったというが、技術提案などに対する評価で最高点を得て落札したというのだ。愛知県警によると逮捕された副所長は入札に関する情報を元社員に教えた疑いがあり、副所長は当時道路工事課の課長補佐として各社の技術提案の評価などに関わっていたそうなのだ。入札価格を記した入札書を各社が提出する前に技術提案の点数などを伝えたとみられ、事前に最高得点であることを知った奥村組が入札価格を高めに設定した可能性があり、国の職員が不正を働く官製談合が後を絶たないというのだ。
この 官製談合とは入札 について公務員がかかわって談合することで、国や地方自治体による事業などの発注のさいに行われる競争入札において、公務員が談合に関与して不公平な形で落札業者が決まるしくみのことをいうのだ。競争入札における談合行為はたとえ発注者側である公務員が関与していたとしても、入札参加者しか対象にされていなかった 独占禁止法 ではどうすることもできなかったというのだ。そのため新しい法律の策定が求められていたことから、公務員等の談合に関与した規定を作ったというのだ。今回の中部地整の事件でも愛知県警によると奥村組の元社員が官製談合の謝礼として 100 万円分の商品券を贈ったとしている。贈賄は収賄より 2 年早く 3 年で時効になるが不正入札の共犯者と見なして逮捕したというのだ。
中部地整は今年の 9 月に三重河川国道事務所の工務第 2 課長が加重収賄と官製談合防止法違反の疑いで逮捕された後、「中部地方整備局発注工事にかかる不正事案防止検討委員会」を設置。不正入札の再発防止策として、まずは事務所を対象に「コンプライアンス(法令順守)の緊急点検」を実施し、先月に第 3 回会合で毎年度定めるコンプライアンス推進計画に基づく取り組みを徹底していたかどうかなどを点検したばかりだったというのだ。中部地整本局を舞台とした今回の事件を受け遅くとも今年度中に委員会の第 4 回会合を開き、緊急点検の内容を再検討したうえで局全体を対象に実施する予定だが、会議を行ったくらいで公務員が不正を働く官製談合が後を絶たないとされているのだ。
今年の 1 月に千葉市職員の関与する談合が発覚したことを受け熊谷俊人市長は、「職員個々が意図的に価格を漏らそうと思ってしまえば、全てを防止する手段というのはなかなか構築し得ない」と語り、公務員が不正入札に絡む「官製談合」を防ぐことの難しさを吐露している。地方公共団体の職員が不正を働く官製談合が後を絶たないのだが、公務員を取り締まる官製談合防止法が施行されて以降摘発が強化されても、「談合・競売入札妨害」は年間 10 ~ 15 件でほぼ横ばいだという。政官の不正事件全体が減る中で相対的に割合が増加しており、そのほとんどは「官製」で企業が地方公共団体の職員から予定価格を聞き出して不正に入札する官製談合は少しも減少してないというのだ。
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