大手広告代理店「電通」の新入社員だった高橋まつりさんが、過度の仕事による過労が原因で自殺してから 1 年となったが、内定直後に書かれた夢と希望にあふれた彼女自身のメッセージが明かされたそうなのだ。高橋まつりさんが電通に内定した直後にアルバイト先の元上司に送ったメッセージなのだが、そのメッセージには「やはり、マスコミ関係の仕事であること、職種の異動があり、出来る事の幅が広いこと。新しいコンテンツをつくりだしていけること、などを重視して会社を選びました」と書かれていたそうなのだ。フェイスブックを通じて職場への期待を伝えていた高橋さんだが、電通に入社した直後にアルバイト先の元上司からは「落ち着いたら連絡して。飯でも食いに行きましょう」というメッセージが残されていたというのだ。
高橋さんは「今月は、まだ分からないので、いろいろと具合が分かったら連絡します」と返していたというのだ。サービス残業が「がんばっている」と認められることの多い日本だが、日本人が主張をすることなく遅くまで働くことを美徳とすることには議論の余地があるという。アルバイト先の元上司は「『同僚と研修に励んでいる』と『土日もあまりない』と書いていたけど、非常に夢にあふれている感じがあって」と話していた。夢にあふれていたという高橋さんだが抱いていた「期待」は、次第に「つらさ」へと変わっていったというのだ。高橋さんはツイッターには「土・日も出勤しなければならないことが、また決定し、本気で死んでしまいたい」とか、「がんばれると思ったのに、予想外に早くつぶれてしまって、自己嫌悪だな」と投稿していたという。
そして昨年のクリスマスに母親に送ったメールには「仕事も人生も、とてもつらいです。今までありがとう」と書かれていたそうなのだ。高橋さんの母親である幸美さんは「『死んではだめよ』と話したら、力はなかったけど、『うん、うん』と」と話した。入社からわずか 9 カ月で高橋さんは飛び降り自殺を図って亡くなり、その後過労が原因の労災と認定された。命日を迎え母親の幸美さんが発表した手記には「クリスマス・イルミネーションで、きらきらしている東京の街を走って、警察署へ向かいました。うそであってほしいと思いながら」と、 1 年前の悲痛な胸の内がつづられているという。ようやく国や社会が動き始めたが本当に実効性のある働き方改革が進むかはこれからが正念場となるといわれているのだ。
この事件で社長の辞任が発表された大手広告代理店「電通」は来年から、年間 10 日の有給休暇取得を義務づけるなど労働環境の改善に努める方針だという。経団連も会員企業に対して過重労働防止の徹底を要請しており、「経営トップ自身が社内の意識改革を図り、実態にあった働き方・休み方改革に取り込むこと」だけでなく、「ストレスチェックなどを行い、労働法令が遵守されているか常時点検を行うこと」に、「管理職は部下とコミュニケーションを蜜にして、疲労の蓄積などを確認し、負担軽減や業務支援に努めること」などが議論されている。国も動きを見せており、安倍首相と蓮舫代表による党首討論でも高橋まつりさんの話と長時間労働抑制に向けたやりとりに多くの時間が割かれ政府は働き方改革の検討を加速しているのだ。
それでも交際労働省の調査によると、いわゆる「サービス残業」を従業員にさせて指導を受けた企業の数が昨年度の1年間で1300社を超え、未払いだった残業代はおよそ100億円だったことがわかったというのだ。厚生労働省によると今年3月までの1年間に従業員に残業代などを支払わない「サービス残業」で労働基準監督署から指導を受け、、100万円以上の未払いの残業代を支払った企業は前の年度より19社多い1348社だったというのだ。支払われた残業代の合計額は99億9423万円で、1社で1億3739万円を支払った企業もあったそうなのだ。産業別で未払いが多かったのは製造業や保健衛生業などで、厚生労働省は「指導を徹底してきたい」として調査を続けていくというのだ。
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