「そんな意識だから経営難になるのだ」と言いたくなるようなことなのだが、経営難の企業が雇用を維持するため、国が休業手当の一部を助成する「雇用調整助成金」制度で、3年間で約54億3千万円の不正な受給が発覚し、このうち4割を超える約23億8千万円が返還されていないことが厚生労働省のまとめでわかったというのだ。厚生労働省は不正受給した企業に返還を求めており、応じない場合は刑事告訴したケースもあるというのだ。厚生労働省が全国の労働局のデータをとりまとめたのだが、未返還の金額が明らかになるのは初めてで、今後の雇用見通しでも若干の違いはみられるものの、受給事業所と非受給事業所との間で大きな違いはみられず、今後雇用が増加するとする割合も遜色ないというのだ。
多くの事業所では雇用調整助成金を活用した雇用調整を通して、雇用面の定常性を取り戻していることが窺われるが、厚生労働省によるとこの3年間にこの助成金を受給したのは全国の21万6762社で、不正受給が発覚したのは379社にのぼっている。企業は受給の際に従業員の出勤簿などを労働局に提出して審査を受けるが、休業させたと偽ったり社員の訓練をしたと申告しながら社員を働かせていたりする手口が後を絶たないという。不正が発覚した場合は各労働局の職員が企業を訪問するなどして返還を督促するというが、返還計画を立てさせるが元々資金繰りに困っており滞ることが多いという。今後は指摘の副作用面への対応のあり方を含めた検討・議論がなされることが望まれている。
この「雇用調整助成金」は景気変動の影響で売り上げが減った企業が、雇用を維持するために従業員を休業させた際に国から支給される助成金で、直近3カ月の売上高や生産量などの月平均が前年同期と比べ10%以上減ったことなどが要件で、従業員1人につき1日に7775円が上限として支給され、教育訓練をした場合はさらに1200円が加算されるという。財源は事業者が納める雇用保険料で制度は1981年に始まっている。経営状況の悪化時にリストラを行わずに雇用を維持した事業者に対して支払われ、雇用調整助成金は細かい給付要件が定められているというのだ。また金融危機を契機として近年大幅に拡充されており、たびたび制度の変更が行われていますので申請時は注意が必要だとされている。
しかもこの「雇用調整助成金」は東日本大震災も加わってことで長期にわたり雇用調整が実施される中で、活用された受給期間をみると1年以内が4割強で、1年超2年以内が4分の1とせいぜい2年以内が7割近くを占めており、多くの場合はメリハリの利いた活用が行われたことが窺われるそうなのだ。ただし3年を超えて受給した事業所も 14 %程度あり、多くが長期にわたりただ単に休業が実施されていたのであるとすれば、そのことの政策的意味は議論されてよいともいわれている。雇用調整助成金の雇用維持効果を高く評価しているが懸念される点も指摘されており、その多くは「不正受給」や「非効率企業の温存」といった制度の副作用に対する懸念だとされているのだ。
しかも日本が学んだことは「不良債権の処理や雇用調整を先送りすることは、短期的には痛みをやわらげるが、それによって経済が悪化する」ということで、不良資産は何倍にもなって返ってくるということなのだ。最後はそれが信用不安となって日本経済が崩壊の危機に直面してやっと「ハード・ランディング」への転換が行なわれたという事実なのだ。その決断に至るまでの「失われた 10 年」に成長率は年率 2 %以上低下し、国民総生産の 20 %近くが失われたと推定されているのだ。つまり雇用調整助成金のように問題を先送りさせる制度は「ゾンビ企業」を延命してしまい、浪費されている人的・物的資源の再配分を阻害して成長率を低下させるということを教訓として残しているというのだ。
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