昼にちょっと眠るだけでも全然違うとされる睡眠不足なのだが、翌日に頭痛や倦怠感を引き起こし日常生活に支障を来すだけではないというのだ。労働者の生産性を低下させ死亡リスクを高めることにより、日本経済に多大な損失をもたらしているというしてきもされている。睡眠不足の原因の1つとなっている長時間労働の抑制に向けて企業も動き出しており、非営利研究機関「ランド・ヨーロップ」の調査研究によると、睡眠不足による経済損失額を国内総生産比で見た場合には日本は 2.92 %となり、調査対象5カ国のうちで最大だとされ、損失額で比べると最大は米国の年間では最高 4110 億ドルで、日本は 1380 億ドルで2番目となっており、睡眠不足が職務遂行能力の低下などを通して生産性を下げているというのだ。
非営利研究機関「ランド・ヨーロップ」の調査によると、睡眠不足という事で全体では年 60 万日を超える労働時間を損失しているというのだが、1日の睡眠時間が平均6時間を下回る人は7~9時間の人に比べて、死亡リスクが 13 %高くなると指摘し、6時間未満を6~7時間に増やすことで日本経済には 7570 億ドルのプラス効果があると試算している。また厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると 20 歳以上の男女で1日の平均睡眠時間が6時間未満の人の割合は 39.5 %となっているという。しかも厚生労働省の「過労死等防止対策白書」によると、フルタイムの正社員調査で睡眠時間が「足りていない」・「どちらかと言えば足りていない」と回答した人の割合は4割を超え、理由としては「残業時間が長いため」が最も多かったというのだ。
第一生命経済研究所の柵山順子主任エコノミストは「長時間労働をしなくてはいけないような雰囲気や、長時間労働をすることで求められている以上のものを返すことが立派だとするような文化が、結局は睡眠時間の不足や生産性の上がりにくい状況を作ってきている」と指摘しているそうなのだ。そして「もう少し時間を意識したような働き方に変えることが大切」だとし、それが長時間労働の是正につながると述べている。長時間労働の見直しに向けて注目されているのが勤務終了後に、一定時間以上の休息期間を設けることを義務付ける「勤務間インターバル制度」なのだ。休息時間を確保することにより労働の質を高め生産性を高めることが狙いでこの「勤務間インターバル制度」を導入する企業が増えているという。
おむつメーカーのユニ・チャームは今年の1月からインターバル制度を導入し、全社員に対して勤務終了から翌日の勤務開始まで8時間以上の休息を義務化したそうなのだ。またユニ・チャームでは午後 10 時以降の勤務を原則禁止している。三井住友信託銀行では昨年の 12 月に退社から出社まで9時間以上空ける対象を含む全行員に広げているというのだ。「勤務間インターバル制度」についてはすでに欧州連合では、加盟国に最低連続 11 時間の休息を確保するよう義務付けているが日本では法制化されておらず、厚生労働省によると「勤務間インターバル制度」を導入している企業は調査した約 1700 社のうち2%にとどまっており、睡眠不足が職務遂行能力の低下などを引き起こしているというのだ。
そこで政府は「勤務間インターバル制度」の導入を後押しするため、中小企業を対象にした助成金制度を始めるというのだが、来年度の予算で約4億円を計上し 50 万円を上限に対象経費の4分の3を補助する方針だという。就業規則等の作成・変更費用や研修費用だけでなく、労務管理用のソフトウェアや機器等の導入・更新費用などが対象となるというのだが、第一生命経済研究所の柵山順子主任エコノミストは、過労死を減らすために長時間労働を是正しなくてはいけないのは大前提だとした上で、人口が減少する中で長時間労働をできない人も増加するとし「長時間労働をしなくても回るような仕組み作りに真剣に取り組まなくてはいけない時期にきていると思う」と述べているそうなのだ。
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