東京電力福島第 1 原発事故による避難指示が帰還困難区域を除いて 4 月に解除される福島県富岡町で、町職員が長距離通勤に不安を抱いているという。町内の本庁舎での業務が再開すると仮役場のある福島県郡山市周辺に生活拠点を移した多くの職員が、福島県富岡町の役場に通うことになるのだ。郡山と富岡間は車で片道約 2 時間だというのだが、町職員は全体で約 140 人だが町に住むのは短信赴任等を入れても35人ほどだという。子どもの学校や親の介護・通院といった家庭の事情や、自宅の修繕遅れなどで避難を続ける職員が多く現在の郡山勤務者ら新たに約 90 人が 4 月から町内勤務となる。国道 288 号など一般道で 90 キロ前後なのだが常磐自動車道などを利用するルートで約 130 キロもあるという。
通勤バスは渋滞の少ない一般道を走る計画で約 90 人全員が乗車できるよう、島県富岡町では大型 2 台の運行をバス会社に委託し、悪天候を想定しマイカー通勤者も乗車可能にする計画だという。所要時間は途中の停車を含め片道 2 時間 20 分で、富岡行きは午前 6 時に町役場郡山事務所を出発する 1 便のみとなっている。帰りの郡山行きは午後 5 時 45 分と午後 7 時半発の 2 便を計画しているそうなのだ。郡山市に再建した自宅に家族 5 人で暮らす 50 代の男性幹部は「毎朝 5 時起床、夜 10 時すぎの帰宅となるが、それでも母が市内の病院に入院し父も通院中のため、妻一人を自宅に残しておけない。単身赴任は難しい」と語っているし、若手女性は「残業で帰りのバスに乗り遅れたらと思うと心配」と言う。
マイカー通勤を選択する小中学生の子どもを持つ 40 代男性は、「子どもが病気をしたときなどに対応できる」と判断したそうなのだが、マイカー利用には通勤手当があるが上限は距離 80 キロの月額 4 万 6500 円で原発事故前から変わっておらず、 30 代の男性職員は「ガソリン代をはじめ維持費で足が出る。実態に見合っていない」とぼやいている。しかも今春を「帰町目標」に掲げ職員が町当局に帰還を強く求められていることもあって、町は歳出抑制を理由に通勤手当の削減も検討しているというのだ。率先垂範を迫られた職員にも長期避難で生じた家庭の事情があって困惑が広がっているが、「低線量被ばくへの不安が拭えない」ということもあって職員も町民と同様に戻りにくい事情をそれぞれ抱えている。
福島県富岡町の町長は今年の年頭訓示で「職員は町民の先達として早期に避難生活から脱却し、町内での自立した生活を示す立場にある。私も先頭に立ち時には心を鬼にしながら進める」と述べるなど、単身ではなく家族で戻ることを促して職員の帰町に強いこだわりをみせているそうなのだ。率先垂範を迫られた職員にも長期避難で生じた家庭の事情があり困惑が広がっており、町職員労組は「単身赴任をしても出費は増える。こうした勤務形態が続けば、若手らの離職につながる」と危機感を募らせる。福島県富岡町は来年 3 月末までの予算約 3000 万円を確保しバス運行を 1 年間は続ける方針だが、職員からは「帰町しなければ職員にふさわしくないと思われたら、つらい」などの声も漏れている。
女性職員の一人は「長距離通勤を 1 年間、頑張れるかどうか。その後は富岡に戻るか退職するか考えねばならないかもしれない」と打ち明けているが、自治労県本部は「自治体当局は職員の人事権を握る。帰還の働き掛けが強制や圧力と感じられるようならば、職員の意欲をそぎ住民サービスにも影響しかねない」と指摘している。現在は業務外で手当もなく町の宿舎は設備が不十分のため自費で宿泊施設に泊まる職員もいるという。町は 4 月から町内のアパートを借り上げ単身赴任者用宿舎も用意するというのだが、伏見克彦総務課長は「何が正解かは分からない。バス予算をどこまで投入できるかという問題もある。どこかの時点で町の近くに住むなどの選択をしてもらわなければならないと思う」と険しい表情をしているという。
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