これまで警察が令状なしで秘密裏に行っていた「 GPS 捜査」について、最高裁大法廷は「令状なしの GPS 捜査は違法」としたうえで、「今後 GPS 捜査をするなら新たなルールを作る必要がある」とまで踏み込んだというのだ。警察は「 GPS 捜査」を控えるよう通知を出したが、今回の判決はそこにとどまらない大きな課題を社会に突きつけていると言われている。最大のポイントは令状のない「 GPS 捜査」を違法とした点で、警察官が容疑者を尾行するのに令状を取る必要はなく、そうした捜査と「 GPS 捜査」はどこが違うのかということが問題となったというのだ。今回の最高裁判決は今後の技術の発達で新しい捜査手法がどんどん出てきた場合でも、その捜査手法と人権とのバランスが問題になるケースで必ず参照されることになるというのだ。
この事件では窃盗事件の捜査のため約 6 カ月半にわたって被告人や共犯者のほか、知人も使う可能性のあった自動車など 19 台に GPS 機器が取り付けられた。弁護士によると被告人は「自分のしたことについて、刑罰を受けるのは当たり前だと思っており、被告人は今回の最高裁判決で窃盗などの罪で懲役 5 年 6 月の有罪となることが確定している。捜査の過程で「行きすぎがあったのなら、それははっきりしてほしい」と話しており、そこで弁護士はほとんど明らかになっていなかった「 GPS 捜査」の実態を解明するため、同期を中心とした 6 人で弁護団を結成して調査を開始し、現場検証や調査で「 GPS 捜査がどのように行われているのか、どの程度のプライバシー侵害があるのか」を明らかにしていったという。
その弁護団によると「最高裁が捜査の違法性をハッキリ認めたことはよかった」と語ったが、これまで警察は警察自身で決めた独自ルールを定め、外部からのチェックを受けない形で「 GPS 捜査」を実施してきており、尾行や張り込みの「補助手段」として「令状がいらない任意捜査」と解釈していたほか、「 GPS 捜査」の存在を秘密にするよう通達していたという。最高裁は「個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって、合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法である」とされ、「 GPS 捜査」は「個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして、刑訴法上特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たる」と判断したという。
また「 GPS 捜査」は必然的に「 GPS 端末を取り付けた対象車両の所在の検索を通じて、対象車両の使用者の行動を継続的、網羅的に把握する」ことになるとしたうえで、裁判所の令状で車両と罪名を特定しただけでは被疑事実と関係のない過剰な行動把握を抑制できないという。「 GP S捜査」は密かに行わなければ意味がないので、事前に令状を示す想定はできないとされているが、刑訴法では令状を呈示することが原則で、呈示に代わる手段が仕組みとして確保されていないと適正手続の観点から問題が残るというのだ。つまり「 GPS 捜査」はプライバシー侵害のおそれがあるもので、法律に沿って行われなければいけない捜査だという判断だと最高裁が決定したというのだ。
海外の先進国では「 GPS 捜査」についてのルール作りが進んでおり、日本弁護士連合会も今年 1 月に「 GPS 捜査」の基準について提案している。これまで警察は外部からのチェックを受けない独自ルールで「 GPS 捜査」を実施してきたが、今後はこうしたルールをふまえて国会などで議論が進みそうだ。「仕組み」としては捜査期間の限定や第三者立ち会いとか、事後通知などのルールが考えられるがそれは立法に委ねられているという。仮に令状で捜査できるとしても裁判官が令状を出すときにいろいろな条件を付けなければならないという。それでは刑訴法の趣旨に沿わない。だから「 GPS 捜査」の特質に着目して憲法や刑訴法の諸原則に適合する立法的な措置が講じられることが望ましいというのだ。
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