内閣府は現在の景気拡大が戦後3番目の長さに達したことを確認したそうで、第2次安倍内閣が発足してから今年4月までの景気拡大局面は53か月(4年5か月)に達し、「バブル景気」)の51か月(4年3か月)を抜いたという。ただし過去に比べて賃金や消費の伸びは緩やかで「実感なき景気回復」と世間ではいわれている。経済学者やエコノミストなどの有識者でつくる「景気動向指数研究会」が会合で、景気拡大が続いている可能性が高いとの認識で一致したというのだ。内閣府は、同研究会に景気の拡大と後退の判断を委ねている。この日の会議で、安倍晋三政権が発足してから始まった「アベノミクス効果」による景気拡大が、消費税増税をきっかけに後退局面に入ったかを検討したという。
この「アベノミクス景気」は世界経済の金融危機からの回復に歩調を合わせ、円安による企業の収益増や公共事業が景気を支えており、生産関連の指標に弱さがみられたものの雇用や企業収益の指標は堅調で悪影響が広範囲に及んでいないことなどから、景気が拡大から後退に移る「山」の認定は行わなかったそうなのだ。景気の現状についてはデータの蓄積がないため正式には行えないが各種の指標の動きを踏まえ、「明確な景気の下降がみられず、景気拡張が続いている可能性が高い」との見方で一致している。焦点となったのは消費増税で個人消費が落ち込み一時的に景気全体が後退したかどうかだったが、「経済活動の収縮は広く波及しなかった」と述べ後退はしなかったとの判断を示したのだ。
景気回復の期間を見る代表的な指標が景気動向指数で、内閣府が公表する2月の指数は景気が回復局面にあるとする「改善」になっており、専門家は「3月の経済情勢をみても、回復している」との見方で一致しているという。今年9月まで回復すると 57 カ月間に及んだ「いざなぎ景気」も抜くわけなのだが、消費増税後は景気が一時的に落ち込んだが、景気回復の期間を判定する内閣府の研究会メンバーは「落ち込みの深さや長さなど総合的に考えて景気後退までは至らなかった」と見ているそうなのだ。米国が長期の回復局面にあって海外景気も比較的安定していたことが日本の景気回復を支えているという判断で、足元の景気は米国や中国をけん引役に企業の生産や輸出が持ち直しているというのだ。
企業業績も底堅く「世界的な金融ショックなどがなければ今年度中は回復が続く」との声は多いがこれまでの回復は緩やかで「低温」だとされている。戦後最長の回復期だった時には輸出は8割伸びたが今回の好景気は2割増だし、設備投資も1割増と前の好景気時の伸びの半分だとされている。賃金の伸びは乏しく個人消費は横ばい圏を脱しきれないが、「アベノミクス景気」を象徴するのが公共投資で、東日本大震災からの復興予算や相次ぐ経済対策で回復の期間中に1割ほど増えている。小泉政権の予算削減で3割減った前回の好景気とは対照的なのだが、内閣府の推計では人口減少で労働力が増えず企業が国内の設備投資に慎重なためで、ここが景気回復の足腰が弱いとされている結果だというのだ。
日本商工会議所は中小企業の設備投資に関する調査結果をまとめているが、対象とした 3456 社のうち設備投資を実施すると回答した企業は 40.7 %で、昨年の同じ時期の調査に比べて 1.5 ポイント多く見送るとの回答は 23 %と 4.2 ポイント下がっている。人手不足が深刻な中小企業が新しい機械の導入などで生産性向上を目指す傾向を浮き彫りにしており、設備投資の理由は「能力増強」が 67.4 %で最も多く、「省力化・合理化」も 50.2 %になっている等人手不足の解消を急いでいるとみられる。中小企業等は好景気時の伸びの半分だとされている設備投資を賃金のような人的な投資を行っていないということが、庶民が思うの微塵の景況感すら感じない好景気」ということを反映しているのでないだろうか。
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