時事通信が実施した 6 月の世論調査で、安倍内閣の支持率は前月比 1 . 5 ポイント減の 45 . 1 %で 4 カ月連続の減少となり、不支持率は前月比 5 . 0 ポイント増の 33 . 9 %で 3 割台に乗ったのは昨年 10 月以来 8 カ月ぶりだという。国会最終盤で与野党の対立が深まっていた組織犯罪処罰法改正案を会期内に成立させるため、自民党と公明党が選んだのは「中間報告」という奇策だったわけなのだが、参院法務委員会での採決を省略すれば国会の混乱ぶりを世間にさらさずにすむという計算だという。学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり当初存在を否定していた文部科学省の内部文書について再調査に追い込まれるなど政府対応への批判が背景にあるとみられている。
与党が中間報告に踏み切ったのは、組織犯罪処罰法改正案を審議する参院法務委員会の委員長を公明党の秋野公造議員が務めていることも要因になったとされている。山口那津男代表は自民党が民進党に中間報告を提案するより前に、「委員長は秋野氏だから、採決が混乱するような場面は避けるべきだ」と述べていた。与野党対決法案は委員会採決時に紛糾することが多く、そうした場面はテレビニュースなどで繰り返し放映される。それだけに東京都議選を重視する公明党は「組織犯罪処罰法改正案」の強行採決を主導したというイメージがつくのを嫌ったわけだが、世論の賛否が分かれる法案を「抜け道」的な手法で成立させることに対する批判は公明党にも向けられているという。
公明党は都議会で自民党との連携を解消し都議選では都民ファーストの会と協力する方針のようだが、与党関係者は中間報告について「自公両党の溝がさらに広がるようだと、失うものは大きい」と漏らしている。野党側は「加計学園の問題も含め、さまざまな疑惑に説明責任を果たそうとしないおごりが表れている」と追及の手を緩めていないし、自民党閣僚経験者からも「こんなやり方は恥ずかしい。国会に委員会はなくていいということになる」という不満は与党内にもくすぶっており、組織犯罪処罰法改正案の成立を急いだ代償は安倍政権にとって小さくないとされてはいるが、世論調査では4割以上の人が支持しているという結果もあり、何をやっても安倍政権の支持率が下がっていないというのだ。
濫用の危険性を孕んだ共謀罪法案を強行採決したかと思えば、「存在が確認できない」として頑なに再調査を拒んでいた「総理のご意向」文書も、一転して「あった」へと素早い変わり身を見せたまま逃げ切りを図ろうとするなど、かなり強引な政権運営が続く安倍政権なのだが、ところがこの安倍政権は確かにライバル民進党の長期低迷という特殊事情もあろうが、「秘密保護法」・「集団的自衛権という安保法制」・「武器輸出三原則の緩和」等、政権がいくつ飛んでもおかしくないような国民の間に根強い反対がある難しい政策課題を次々とクリアし、危ういスキャンダルネタも難なく乗り越え、その支持率は常に高値安定を続けており、政権の支持基盤は「安倍一強」というように盤石に見えるのだ。
最新の世論調査では 20 代の若者の安倍政権の支持率は 68 %にも及んでいるそうで、朝日新聞の調査でも若い世代ほど自民党の支持率が高いことが明らかになっている。これは若年世代と年長世代の間で政治や権力に期待するものが異なっていることを示している可能性が高いというのだ。若者も経済や雇用政策などへの関心がかつて重視してきた平和や人権といった理念よりも優先するようになっているそうで、格差の拡大も気にはなるがそれでも明確な経済政策を掲げある程度好景気を維持してくれている安倍政権は、概ね支持すべき政権となるのは当然のことで、少なくとも人権や安全保障政策では強い主張を持ちながら、経済政策に不安を抱える他の勢力よりも安倍政権の方がはるかにましということのようなのだ。
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