厚生労働省が発表する「リスクマネージメントマニュアル作成指針」にも定義されている、「ヒヤリ・ハット」には「ハインリッヒの法則」というのがあって、この労働災害における有名な法則名はこの法則を導き出したハーバート・ウィリアム・ハインリッヒに由来しているとされている。彼が損害保険会社にて技術・調査部の副部長をしていた時に出版された論文が法則の初出であるとされているが、ある工場で発生した労働災害 5000 件余を統計的に的に調べ計算してみると「災害」について現れた数値は「 1:29:300 」であったそうなのだ。その内訳として「重傷」以上の災害が 1 件あったらその背後には、 29 件の「軽傷」を伴う災害が起こり、その下には 300 件もの危うく大惨事になる傷害のない災害が起きていたことになるというのだ。
更に多くの事故には幾千件もの「不安全行動」と「不安全状態」が存在しており、そのうち予防可能であるものは「労働災害全体の 98% を占める」とし、「不安全行動は不安全状態の約 9 倍の頻度で出現している」ことを約 75,000 例の分析で明らかにしているそうなのだ。なおハーバート・ウィリアム・ハインリッヒは「災害」を事故と事故を起こさせ得る可能性のある予想外で抑制されない事象と定義しているともされている。私の住んでいる伊方原発は昨年の8月に再稼働されているが地元新聞には毎月「伊方原発で起こった事故」として、無害という「Cランク事故」が紹介され続けているのだ。このことを「ハインリッヒの法則」の法則に当てはめると毎月数回の「ヒヤリ・ハット」に当たる事故が起こっていることになるのだ。
日本原子力研究開発機構は茨城県大洗町の核燃料研究施設「 大洗研究開発センター 」燃料研究棟で被ばくした作業員 5 人が、放射線医学総合研究所に再入院したと発表している。この事故は作業員5人が燃料の貯蔵容器の点検をしていたところ、放射性物質が入った袋が誤って破れ 被曝 した事故で、漏れ出た放射性物質は施設内のその場に留まって外部への影響はないと発表されていた。被曝した恐れがある5人のうち3人の鼻から最大で24ベクレルの放射性物質が確認されており、作業員が被曝していないか調べていたそうなのだが、作業員1人の肺から最大2万2000ベクレルの放射性物質が計測され内部被曝が判明したた。専門の施設に移して詳しい検査を行う方針を固めたという。
被ばくした 5 人の作業員は放医研で内部被ばくを低減する治療などを受け退院していたそうなのだが、そのあとの検査で尿からプルトニウムとアメニシウムが検出され、内部被ばくしていたことがわかったことから 2 回目の治療を受けるため再入院したという。また日本原子力研究開発機構は法令に基づいた事故の報告を原子力規制委員会に提出したそうで、日本原子力研究開発機構の児玉理事長は東京都内で会見しあらためて謝罪したうえで、原因究明や再発防止に全力を尽くすとして現時点での辞任を否定している。このればルの原発事故となると労働災害における有名な「ハインリッヒの法則」では、さすがに「軽傷」を伴う災害の「Bランク事故」くらいにはなるのだはないだろうか。
韓国の文在寅大統領は東京電力福島第 1 原発事故を教訓に、原子力発電に関する政策を全面的に再検討する方針を表明し、「新規原発建設計画を全面白紙化し、原発の寿命も延長しない」と述べた。また現在稼働中の原発の安全基準も大幅に強化すると強調し、国民の安全向上を優先課題に掲げ原子力政策の根本的転換に乗り出したという。このニュースのコメントの中には「失敗続きの政策の中でこれだけは間違いなく成功するでしょう。何と言っても技術が無いのですから」というのがあったが、安倍首相が「アンダー・コントロールできている」という東京電力福島第 1 原発事故の原因調査も出来ていない我が国の原発技術に、どれくらいの信用が置けるのか「ハインリッヒの法則」に照らし合わせてみたいものなのだ。
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