九州北部を襲った豪雨について気象庁は名前を付けるかどうか苦慮しているそうなのだが、各地の被害確認が難航し建物被害の規模が命名基準を満たしていないためだという。気象庁は顕著な災害を起こした自然現象については命名することにより共通の名称を使用して、過去に発生した大規模な災害における経験や貴重な教訓を後世代に伝承するとともに、防災関係機関等が災害発生後の応急対策や復旧活動を円滑に実施することが期待している。災害に共通の呼称を使うことで教訓が伝えやすくなるなどの理由で、大規模災害を引き起こした自然現象に名前を付けているわけだが、豪雨の命名基準は損壊家屋が1000棟以上で浸水家屋が1万棟以上などと定めているが人的被害は条件に含まれていないという。
豪雨の命名基準は損壊家屋が1000棟以上で浸水家屋が1万棟以上などと定めているが、今回の豪雨は死者が32人に上り気象庁が命名した5年前の「平成24年7月九州北部豪雨」と同規模に達しているが、ただし福岡県と大分県の住宅被害は一部損壊以上が計199棟で、床上床下浸水が計464棟とされ命名基準を大幅に下回っている。気象庁は「雨が狭い範囲に集中した。まだ梅雨が続き災害の規模が確定できず、現時点では判断できない」としているが、豪雨災害の場合は被害が広域にわたる場合が多いので、あらかじめ画一的に名称の付け方を定めることが難しいことから被害の広がり等に応じてその都度適切に判断しており、これまでも伊豆大島の土石流災害などは命名基準を満たしていないというのだ。
九州北部豪雨による住宅被害の調査が進んでおらず、福岡県と大分県のまとめでは現在の住宅被害は全壊102棟を含む651棟となっているが、24人の犠牲者が出ている 福岡県朝倉市では土砂崩れなどで現場を確認できず被災者からの申告に基づいているのが現状となっているそうなのだ。福岡県朝倉市が調査を開始できる見通しは立っておらず、住宅被害の棟数は今後大きく増えるとみられているが、豪雨では河川の氾濫や土砂崩れが相次ぎ道路が寸断されるなどして多くの集落が孤立したという。朝倉市は全壊の72棟を含む118棟の被害を福岡県に報告しているが、住宅被害が出ている地域は今も道路事情が悪く、被害把握のために現地に入れていないというのだ。
福岡県朝倉市では住宅被害を受けた人が公的支援を受ける際に必要となる罹災証明書の申請は780件出ているが、住宅の被災状況を確認する調査を始められる時期ははっきりしていないそうなのだ。朝倉市の担当者は「今後、住宅被害はどんどん増える可能性が高い」と話しているが、大分県日田市は12棟が全壊したとして現地調査を始めているが、状況が確認できていない地域もあるという。天候や道路状況が改善してきたため確認作業はこれから進む見通しなのだが、14棟が全壊したという福岡県東峰村も現地調調査を進めているという。専門家は「災害の呼称が決まれば、インターネット検索で支援活動の情報収集にも役立つ。早く命名するのが望ましい」と指摘している。
静岡大学で災害情報学を教える牛山素行教授は「語り継ぐ必要があるのは人的被害が大きな災害なのに、基準に考慮されていないのは違和感がある。再考すべきではないか」と話しているそうなのだ。その中で九州北部豪雨では被害が大きかった福岡県朝倉市と東峰村の山中で少なくとも300カ所以上の表層崩壊が起きていたことが九州森林管理局などの調査で分かったというのだ。福岡県側の狭い地域に豪雨が集中し山の谷筋に雨水が集まって斜面が削られ同時多発的な表層崩壊が発生したとみている。今後の精査で発生箇所がさらに増える可能性があるというが、福岡県は朝倉市と東峰村の流木の量は推計で20万トンとされ、筑後川水系10河川に東京ドームの容積の3分の1に相当する流木が確認されたという。
キーワードサーチ
コメント新着