私たちの多くが午後 2 時ごろになるとエネルギーを消耗してしまった感覚に襲われるのだが、これは呼び方を「ランチ・コーマ」という昼食による眠気とか、「ミッドデイ・ブルー」とよばれる真昼の憂鬱でも同じだといわれている。これは脳の活動によって頭がぼんやりしてしまう状態だというのだ。午後の眠気は昼食と関連づけられることが多いのだが、昼食をとらなくても午後には眠気がおこるし食事の影響を取り除くために小刻みな時間間隔で少しずつ食事を与えた場合でも起こるという。このような理由から午後の眠気については食事そのものの影響は少ないと考えられるそうなのだが、それでも公共の乗り物など短時間の間にうとうとするだけですっきり目が覚めたという経験は誰しも持っているそうなのだ。
ところが休日などつい居眠りしてしまった結果目覚めたときの気分が悪く、眠らなければよかったと後悔することもあるのだが、これが睡眠慣性と呼ばれている現象で目覚めてもまだ睡眠が続いているような状況を指すという。米科学誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」電子版に掲載された研究結果によると、この状態は脳の報酬系の機能と関連していると考えられるというのだ。具体的に言えば私たちのやる気を高める脳の報酬系の活動は正午ごろに停滞するというのだ。まず、この場合の「報酬」が何を意味するのかを理解しておくと分かりやすいのだが、朝起きて仕事に行きその日の課題に取り組むなど私たちがする全てのことは、脳にとってのこの「報酬」に関連しているそうなのだ。
私たちが達成しようとすることまたは手に入れよう・学ぼう・実現しようとか、あるいは影響力を及ぼそうとすることなどの全てが脳の報酬となるという。脳はほぼ常にあらゆる種類の報酬を得ることに集中するようにできているのだが、この研究結果が示すのは報酬を求める脳の機能には潮の干満のようなリズムがあるということなのだ。研究チームは調査に参加した少数のボランティアを対象に磁気共鳴機能画像法を使って午前 10 時と午後 2 時と午後 7 時の脳の報酬系の状態を調べた結果、左被殻と呼ばれる脳の領域が日中の早い時間と遅い時間に最も活性化され午後の早い時間に最も非活性化されていることを確認したそうで、左被殻は報酬の処理と期待に深く関連しており、私たちのやる気は朝と夜にピークに達するというのだ。
反対に午後の早い時間には左被殻は報酬の処理と期待は最も低下するということだという。研究チームは午後の早い時間に脳が経験しているのは「報酬予測誤差」だと見ており、報酬が得られる期待が最も低くそのため報酬を求めるエネルギーが高まるのは一日の早い時間と遅い時間で、報酬に対する期待がピークに達するのは正午ごろで、そのため報酬を欲するエネルギーが低下しぼんやりした状態になるというのだ。この予測誤差は私たちにとって重要な役割を果たしているそうで、報酬を期待するタイミングと実際に得るタイミングにずれがあることによって、私たちは多くのことを学び達成できると考えられるというのだ。こうした説明は現時点では推測にとどまるが、私たちが昼過ぎに眠気を感じるのは確かなのだだ。
それに加えしっかりランチを取った後の血糖値の上昇と下落も関連があって、最高の成果を上げなければならない大型プロジェクト関連の仕事に集中しようとするのに、午後の早い時間は最適のタイミングではないというのは事実のようなのだ。そこで覚醒作用のあるカフェインがコーヒーという形で日常的に用いられているが、カフェインは経口投与しておよそ 45 分以内に胃腸から 99 %が吸収され血漿中の濃度は服用してから 15 分から 120 分で最大になるという。 カフェインを服用してからその効果が現れるまで時間がかかることを考慮し、短い昼寝をとる直前にカフェインを服用しておけば起床直後にカフェインの効果が現れ睡眠慣性を低減することができことが考えられるというのだ。
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