森林や緑の多い場所を散策する「森林浴」という言葉はよくされているが、私も森の中を歩くと森林浴で癒やされたり安らぎを覚えたりしたこともある。森林浴という言葉は 1982 年に林野庁が「森林浴構想」を発表したのが始まりとされているそうだが、都市部で生活している方はあまり意識されないかもしれないが日本の国土の 7 割程度は森林が占めていて、世界でも有数の森林国と言えるそうなのだ。そして林野庁から提唱されている森林浴はそうした自然休養林などの国有林を整備して、有効活用することで森林でのレクリエーションを楽しみながら、メンタルヘルス対策のプログラムに森林浴や森林での保養を取り入れて、心身の健康づくりに役立てようとしたものだというのだ。
この森林浴は近年欧米でも注目され、米ワシントン・ポスト紙でもカリフォルニア州などを中心に全米各地で広まっていることが紹介されている。また中国でも国を挙げて森林の整備や健康増進への活用の取り組みが進んでいるというのだ。自然療法が公的に認められているドイツでは 1800 年代後半にセバスチャン・クナイプ神父によって確立された「クナイプ療法」が浸透しているが、クナイプ療法の柱の 1 つである運動療法にも森林散策が取り入れられているというのだ。森林での癒し効果は古くから感覚的・体験的に語られてきていたそうなのだが、その効果を科学的に検証し、 ストレスの緩和や心身の健康の維持・増進・病気予防などに生かすための取り組みとして誕生したのが「森林セラピー」だという。
森林セラピーでは森林ウオーキングなどの運動を通じたフィットネス・プログラムや、森林の中で呼吸法やヨガなどを体験するリラクゼーション・プログラムが行われ、食事はその地域の食材を使ったヘルシーな郷土料理が楽しめたり、近隣の温泉が利用できたり医師による健康相談が実施されたりすることもあるという。森林地域と都市部での検証結果を比較すると森林地域ではストレス時に高まる交感神経の活動が抑えられ、「ストレスホルモン」と呼ばれる唾液中のコルチゾールの濃度が低下することが分かっている。また森林浴を行うと緊張感や疲労感が緩和されて活気が増すことで血圧や脈拍数が低下するなど、心理的にも身体的にもリラックスした状態になることも確認されているというのだ。
森林浴やウオーキングなどのプログラムを実施する動きが広まってきており、日本では残念ながら健康保険は適用されないが会社が費用の一部を負担する形で、社員にプログラムの体験を推奨する企業が出てきているそうなのだ。従業員のメンタルヘルス対策のために企業が行う研修には様々なものがあるが、リラクゼーションを目的としたプログラムの中でも特にお勧めなのだが「森林養生」を取り入れた研修だという。具体的にはガイドと共に森林を散策しながら五感を刺激し、呼吸法やヨガなどのリラクゼーションを体験するフィールド活動に、座学やディスカッションを組み合わせ、ストレス緩和やメンバー間のコミュニケーションの活性化を図る研修を行い、ストレスの緩和や心身の健康の維持・増進・病気予防などに生かすというのだ。
森林でのプログラムは地域や季節、ガイドによっても内容が変わるが、ポイントとなるのは見る・聴く・嗅ぐ・触る・味わうの「五感」への刺激が、森林の専門家が付くことで豊かで確かなものになっていくことでという。これらのプログラムでは普通に歩けば 1 時間もかからないような森の中を 2 時間かけてゆっくりと歩き、ときどき立ち止まって緑や空を仰いで目を休めたり風の音や鳥のさえずりに耳を澄ませたり、樹木の葉の香りを嗅いだり、口に含んでみたりして、裸足になって草や落ち葉の上を歩いたり小川のせせらぎに足をひたしたり、各自がお気に入りの木を見つけその授記ついて調べてみたりするなど、さまざまな方法で自らの五感を刺激して心身の感覚を目覚めさせるというのだ。
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