国土交通省は一定の規模を超える法面を対象に 5 年に 1 回の近接目視点検を求める「道路土工構造物点検要領」を策定し、 9 月に国土交通省のウェブサイトで公開したのだが、順次各道路管理者に通知して運用を開始するという。重要度の高い一般国道や高速道路を構成する高さ 10m 以上の盛土と、高さ 15m 以上の切土を「特定道路土工構造物」として点検の対象としたというのだ。付随するグラウンドアンカーや擁壁にカルバート・排水施設などを含むというが、シェッドや 2 車線以上の道路が通る大型カルバートには別に点検要領を定めているので対象から外したという。土工構造物の損傷は経年による劣化よりも降雨や地震をきっかけに生じることが多いので点検頻度は 5 年に 1 回を目安にするという。
また台風や梅雨など地域の状況を考慮して道路管理者が設定することとしているが、降雨や地震などの自然災害の影響を大きく受ける道路土工構造物について、防災上及び効率的な維持修繕の観点から適切な時期を把握し適切な対策を施すことにあるという。本点検方法は近接目視を基本とするが必要に応じて触診や打音検査といった非破壊検査を用い、土工構造物の損傷は吹付モルタルの剥離やひび割れだけでなく、擁壁のはらみ出しなど多岐にわたるうえ変状の発生メカニズムには不確定な要素が多いことから、今後新しい点検技術が開発されれば採用を検討するよう求めているが、道路の定期点検要領の整備を始めたきっかけは 5 年前の 11 月に発生した笹子トンネルの崩落事故とされている。
点検する技術者には資格や業務経験を求めないが、地盤を原因とした災害に関する知見のほか、鋼構造やコンクリートの知識を持っていることが重要だとした。評価は橋やトンネルなどの構造物と同様に点検の結果によって健全性を I ~ IV の 4 段階で評価するが、数字が大きいほど変状が著しく危険度が高いとしている。区分 II と診断された場合は経過観察が必要で計測機器を使ったモニタリングの実施などを推奨しており、区分 III は詳細な調査をして速やかに対策することが望ましい状態だという。雨が続くなど損傷が早く進行する恐れがある場合は土のうやブルーシートで応急措置を行う必要があるとし、緊急措置が必要な区分 IV では直ちに通行を規制する必要があるとするそうなのだ。
特定道路土工構造物の基準に満たない法面については点検の頻度を指定しないが、従来通り日常の巡視や通報で異常が発見された場合に近接目視などで詳細に点検するという。 また自然斜面の点検は規定せず「道路防災総点検」といった既存の取り組みを引き継ぐが、斜面崩壊によって法面や構造物に影響を及ぼす恐れがあるような場合は、同時に点検するのが望ましいとしている。 国土交通省は第三者被害の防止を目的として道路の「総点検実施要領(案)」をまとめており、土工構造物についても「道路のり面工・土工構造物の調査要領(案)」を作成し運用してきた。その後人的被害の防止に加えて維持管理の効率化や予防保全の観点から、橋やトンネルなど道路構造物の点検要領を作成してきたのだ。
今回の道路土工構造物点検要領の策定で全てが出そろったわけだが、適切なタイミングで補修や補強をすることで維持管理にかかるコストを低減さすという。点検の頻度や方法は道路法施行規則で定めているが、橋やトンネルなどの点検は近接目視で 5 年に 1 回の頻度で行うと規定しており、特定道路土工構造物の点検もこれに倣ったという。近接目視による点検の義務化と、の頻度などを定めた省令・告示を施行している。トンネルは全国に約 1 万本、 2m 以上の橋は約 70 万橋に上るが、罰則こそないものの予算や人材の面で苦境に立つ自治体には戸惑う声も少なくない。このため、実際の点検にあたっては本要領の趣旨を踏まえて、個々の道路土工構造物の諸条件を考慮して点検の目的が達成される必要があるとしている。
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