「医者が教える食事術・最強の教科書」の著者で東京の銀座で糖尿病患者を専門に診る AGE 牧田クリニック院長の牧田善二医師は、イギリスの科学雑誌ネイチャーに人工甘味料のリスクが掲載されて以来患者には人工甘味料の摂取を勧めなくなったという。論文は「健康な人の糖尿病のリスクを高めることが示唆されているが、糖尿病患者については言及しておらず、リスクについて知ることは糖尿病の管理に重要だと考えていますので、患者さんには必ず伝えています」という。また人工甘味料が悪いのではなく「安易に頼りすぎていることが問題」と指摘するのは、サイエンスライターの松永和紀さんで、このほかにも人工甘味料の強い甘さに慣れると甘みの感覚が鈍くなり、より強い甘さを欲するようになるとの指摘もあるという。
そのほかにも「腸にも甘みを感じるレセプターがあり糖の吸収を高める」といった問題も報告されているが、どれだけの発症リスクがあるのかということでは、 金沢医科大学医学部衛生学准教授の櫻井勝医師は富山県の金属製品製造業の従業員で、糖尿病のない 35 ~ 55 歳の男性 2037 人を約 7 年間にわたって追跡調査したというのだ。この間に糖尿病を発症したのは 170 人だそうなのだが、人工甘味料入りダイエット飲料の摂取量と糖尿病の発症との関連を調べるとダイエット飲料を週にカップに約 1 杯以上飲む人は、飲まない人に比べて糖尿病のリスクが 1.7 倍高かったというのだ。そして「個人的には、過剰摂取によって甘味への依存性をもたらす危険性はあると思っています」というのだ。
金沢医科大学医学部衛生学准教授の櫻井勝医師によると「一般的には肥満傾向があり、糖尿病になりやすい人がダイエット飲料を好むと言われています。人工甘味料が糖尿病のリスクを高めるのではなく、そもそも糖尿病になりやすい人が人工甘味料をとっているわけです。そこで、この調査ではそういう要素を考慮して、分析を行いました」というが、それでも 1.7 倍という結果が出たので「人工甘味料自体がリスクになっている可能性が高い」と話して、まったく別のメカニズムから糖尿病の発症に関わっている可能性が、さまざまな研究でわかってきていると警告している。そして「 「個人的には、過剰摂取によって甘味への依存性をもたらす危険性はあると思っています」と結論付けている。
しかも「ダイエット飲料でカロリーを控えたから大丈夫だろうと気を抜いて、揚げものなど油っぽい料理ばかり食べたり、食べすぎたりする人がいますが、本末転倒。脂質 1 グラムあたりのカロリーは砂糖の 2 倍以上あるので、結果的にカロリーオーバーとなり、肥満や糖尿病のリスクを高めます」と語り、カロリーを気にするのであれば日々の食事の内容にもしっかり気を使うべきだとアドバイスする。人工甘味料に関する数々の論文をチェックしている神奈川県立保健福祉大学栄養学科教授の中島啓医師は、「評価方法が異なるため、論文には糖尿病のリスクを下げるもの、上げるものが混在していて、結論は出ていない」と話す。だからこそ人工甘味料を上手に使って健康管理に役立てることが大事だという。
わが国の食品表示基準では「無○○」や「○○ゼロ」に「ノン○○」という表示は、 100 ミリリットルあたり 5 キロカロリー未満と決められており、人工甘味料はこれまでは肥満や糖尿病などの予防や改善に役立つとされてきた。人工甘味料は砂糖と違って血糖値を上げることはないことから空腹時に飲むと、血糖値が上がらないため低血糖が起こることも危惧されているし、脳は食事量が足りないと錯覚し、食べすぎてしまう危険もあるという。一見ヘルシーにみえるこの人工甘味料は体内の糖の代謝に影響を与え、糖尿病の発症リスクを高める可能性が指摘されていることから、食後にちょっと甘いものがほしいときに利用するなど、とり方には工夫が必要だというのが、どうやら多くの医者の結論のようなのだ。
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