コンビニ業界大手の ファミリーマートが 24 時間営業の見直しに着手しているそうなのだが、ファミリーマートは 2016 年 9 月にサークル K サンクスと統合し、両ブランドの合計で全国約 1 万 7800 店を展開している。ファミリーマートはこのうち深夜帯の来客が少ない数店舗で、深夜から未明にかけての深夜営業をやめ、「売り上げはどれだけ減るのか」とか、「人件費や光熱費などの経費はどれほど浮くのか」など経営への影響を検証するというのだ。それによって人手不足や出店競争で激化する客の奪い合いによりコンビニ加盟店の経営状況が苦しさを増していることに対応するそうなのだが、「いつでも開いている」ことを他業態にない利便性として訴えてきた業界のなかでは極めて異例の試みとされている。
コンビニ業界では最大手のセブン - イレブン・ジャパンが 1974 年に国内 1 号店を開業し、 1975 年には 24 時間営業を開始し少しずつ全国へと広げてきたという。ファミリーマートも 1980 年代前半には大半の店舗が 24 時間営業に切り替わっており、現在では鉄道駅構内やオフィスビル内を除いた約 95 %が 24 時間営業店となっている。ファミリーレストランなど他業界では数年前から 24 時間営業を見直す動きが広がってきているのに、コンビニ業界で見直しの機運が広がらなかったのはコンビニ店舗のほとんどが「株式会社セブン - イレブン・ジャパン」や、「株式会社ファミリーマート」といったチェーン本部の直営店ではなく、本部とフランチャイズチェーン契約を結んだ独立事業主が運営しているからだというのだ。
大手チェーンの場合本部は売上高から商品原価を除いた粗利益の一定割合を、 経営指導料という形で加盟店から受け取っているというのだ。つまり商品が売れさえすれば人件費が増えようが減ろうが原則として本部収益には影響しないシステムとなっているという。このためある加盟店オーナーにいわせれば「深夜営業でいくら経費がかさんでも、まんじゅう 1 個でも売れれば本部は黒字」という構図となっているという。このためチェーン本部は人件費の上昇や深夜の店員確保が難しくなっているといった社会情勢の変化について頭の中では理解していながらも、店舗売り上げの減少に直結する深夜営業の見直しについては、経営指導料が減少するということで及び腰であり続けてきたというのだ。
深夜帯はアルバイトやパートが集まりにくく人件費もかさむため各社業績の重しとなってきているというのに、セブン - イレブン・ジャパンの古屋一樹社長は仮に営業時間を午前 7 時~午後 11 時に変えれば店全体の売り上げは 3 割落ちる」と説明し、 24 時間営業の見直しについて「社内で議論したことはない。加盟店からもそんな声は全く出ていない」と強調している。ローソンの竹増貞信社長もインタビューで「ローソンだけが 24 時間営業をやめると、客が他のチェーンに流れてしまう」と慎重姿勢を崩さなかったという。そのうえ深夜帯のコンビニでは検品や品出し・清掃など接客以外の作業も行われていることもあって、この点もチェーン本部からみた深夜営業継続の理由の一つだとされている。
24 時間営業をやめた場合に消費者にとっての利便性は損なわれてしまため、身近な店舗が深夜営業している便利さと安心感は大きく、「社会インフラ」として消費者の支持を得てきたコンビニが 24 時間営業を単純に縮小すれば、業界の衰退は免れない。そこでファミリーマートは店員不在の時間帯には店外に設置する自動販売機で商品を買えるようにする「実質 24 時間営業」という代替案も検討しているという。すでに神奈川県の一部店舗では自販機設置に向けて土地所有者と交渉しているもようだそうで、業界全体では右肩上がりのように思えるコンビニも加盟店の収益性は伸び悩んでいるとされ、売り場の担い手たちの苦境を放置すれば遅かれ早かれ消費者の生活に欠かせない「社会インフラ」は崩壊しかねない状況だという。
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