一般住宅に有料で客を泊める「民泊」の基本ルールを定めた 「住宅宿泊事業法」が今年の6月に施行されるのを前に、分譲マンションの管理組合が民泊使用の可否を管理規約で明記するよう求められている。訪日外国人の増加による宿泊施設不足の解消に向け「住宅宿泊事業法」はマンションでも民泊営業を可能としているが、昨年の6月に成立し今年6月に施行される民泊の基本的なルールを定めた法律である「住宅宿泊事業法」は、家主が都道府県などに届け出れば年間180日を上限に営業ができ、民泊住宅と分かる標識の掲示や宿泊者名簿の作成に定期的な清掃などが義務付けられ、違反した家主には業務停止命令を出して従わない場合には6月以下の懲役か100万円以下の罰金が科されることになっている。
観光庁によると一昨年の外国人宿泊者数は延べ約6939万人で過去最多を記録しており、昨年も一昨年を上回るペースで推移し11月中に7千万人を超えている。訪日外国人の増加による宿泊施設不足の解消に向け政府は、民泊を旅館業法の「簡易宿所」に位置付け許可制の形で解禁したが、厚生労働省の調査では民泊仲介サイトの登録物件のうち、許可を得ていたのは約17%にとどまるなど無許可の民泊が横行しているとされている。「住宅宿泊事業法」はマンションでも民泊営業を可能としているが、兵庫県や神戸市などは営業地域や期間を規制する条例の制定を目指しており、国は「規約はマンションのルールブック。民泊に対し、住民の統一した見解を定めてほしい」と呼び掛けている。
民泊を許容する場合消防法の問題は無視できないとされ、新たに消防設備を設けないといけないケースも出てきているが、特区民泊の事例では消防法で消防設備を共用部分に設置しないといけないことが判明しているが、なかなか進まないケースも実際に多いという。消防法による消防設備を共用部分に設置することになると、マンションの共用部分の変更には総会決議が必要で大規模な変更工事になると総会で 4 分の 3 以上の賛成が求められるケースも生じてくる可能性があるという。また兵庫県は「民泊が地域の生活環境を悪化させるおそれがある」として教育施設周辺や住居専用地域での営業を全面禁止とする条例骨子案を公表しており、「住宅宿泊事業法」と同じ時期に条例の施行を目指している。
分譲マンションでの民泊事業の営業には「マンション管理規約」で民泊使用が禁止されていないことを証明する書類の提出が必要とされ国土交通省は改正を求めているが、神戸市が市内にある約3500の分譲マンションの管理組合へ規約改正を呼び掛ける文書を配布したところ、約70件の問い合わせがあり「3月までの改正は難しい」とか、「賃貸人への対策はどうすればいいのか」といった相談のほか、「交換留学生の引き受けも民泊になるか」や「賃貸借契約と民泊との違いは」など民泊そのものへの質問も寄せられたという。私も自宅マンションでは管理組合の理事長を務めているが、民泊を禁止とする改正規約案の作成に携わり昨年12月に行った管理組合の総会で、規約改正を行い住民へ周知をしたところなのだ。
全国的にみてもマンションでの民泊を巡っては大阪地裁が無断営業した男性に対し、管理組合へ賠償金50万円を支払うよう命じたり、東京や大阪で管理組合が違法営業する部屋の所有者を訴えたりするなど訴訟に発展するケースも相次いでいる。県や市の条例が施行されても民泊が規制されないマンションが生じるといい、マンションでの民泊禁止の先進地である神戸市住宅都市局の中川龍一民間住宅担当課長は、「マンションとして民泊可否の方針を明確に示すことがトラブルの回避につながる」としている。また国土交通省は民泊を巡るトラブルの防止を目的に住宅宿泊事業を許容するか否かについて、あらかじめマンション管理組合が管理規約上で明確化することを呼び掛けているという。
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