私もそろそろ高齢者の仲間入りをしてきたのだが、再雇用された事務所への通勤には原付バイクを使って通勤するようになったのだが、最近では高齢のため家族から運転免許の返納を勧められていた85歳の高齢者が、前橋市内で自転車に乗って学校の始業式に向かう女子高校生 2 人を車ではね意識不明の重体にしたニュースが報道されている。この男性は普段から物忘れがあり、物損事故も多く、家族が運転免許の返納を勧めていた。しかし従わなかった。警察が自動車運転死傷処罰法違反の「過失運転致傷」の疑いで男性を逮捕したところ、この85歳の高齢者は「気付いたら事故を起こしていた」と供述したという。このように高齢者が加害者となる事故が目立ち社会問題になっているという。
高齢者の運転免許の是非は社会全体で議論すべき重大なテーマになっており、大手新聞も社説等で「高齢者の運転適応能力が低下するのは、自然の摂理だ」と指摘したうえで、「免許返納の促進は、被害者のみならず、高齢ドライバーを守るためのものでもある」と主張し、「被害者にとってはもちろん、事故は加害者やその家族にとっても悲劇に他ならない」と書いているという。さらに「運転に不安があれば自主的に返納すべきである。家族も目を配りたい」と書き、続けて「明らかに能力を欠きながら運転に固執するケースには、強制力をもって免許を返納させる仕組みが必要ではないか」と訴える。高齢者の事故原因は認知症だけではなく年齢に伴う判断力や運転技能の低下は事故に直結する可能性が高いとされている。
高齢者の運転に関しては昨年 3 月に改正道路交通法が施行され、認知症対策が強化されているのだが、75歳以上のドライバーは免許更新時などの検査で認知症の恐れがあると判定されれば医師の診断が義務づけられる。その結果認知症と確定すると免許の取り消しや停止の対象となるとされているが、更新などの手続きを終えた後に病気や障害が悪化し認知機能が衰えたり判断能力が鈍ったりする場合には、高齢者が運転をし続ける危険祭があるというのだ。私の先輩は家族全員で警察の相談窓口に行って認知症などの検査をし、認知力の低下を実感したことで免許を手放したのだが、これには粘り強く説得してくれた警察官の協力があって、説得力のある言葉や行動で相手に理解を求めることが大切だという。
ところが政府は「高齢社会対策大綱」の案を自民党の会合に提示したのだが、この大綱の目玉は公的年金の受給開始時期について 70 歳超も選択可能にする検討で、 60 ~ 64 歳の就業率を引き上げるとの数値目標も盛り込まれている。高齢者がその能力や経験を生かして働ける場を増やすことは国の経済にとって望ましいことというのだ。つまり社会の高齢化が加速度的に進むなかで働く意欲のある高齢者の就労をどんどん増やし、公的年金制度などの社会保障を財政的に維持していこうというわけなのだ。ここで注目したいのは高齢者の労働と運転免許の関係で、運転免許がなければ従事できない仕事が多く、運転技能と判断力があって十分仕事がこなせる高齢者の修行機会を奪ってしまうことになるという。
高齢者の雇用に関しては平成 25 年の改正高年齢者雇用安定法により、定年が 60 歳の企業でも希望者全員を 65 歳まで継続雇用することが義務づけられており、これは主に年金受給開始時期の引き上げにともなう生活保障の意味合いが強いが高齢者の雇用機会の保障として有効であるとされている。仕事を長く続けるのはどうしても運転免許は必要で、こうなると高齢者は運転免許返上しにくくなる。また地方に住む高齢者にとって車は生活必需品で、食材を求めてスーパーマーケットまで出かけたり、定期的に持病の診察を受けに病院等へ行ったりするのに車が運転できなければ不便でどうしようもないのだ。高齢者の交通事故をなくすためにはこうした問題点もよく考える必要があって問題は一筋縄ではいかないというのだ。
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