多くの観光客などで年中にぎわう東京の観光スポット「お台場」なのだが、そこから南東に 2.5km ほど離れた観光客がほとんど訪れることのない東京港で、全長が 930.8m の海底トンネルがつながったという。お台場に隣接する有明地区から中央防波堤地区までを結ぶ「東京港臨港道路南北線」の一部となるのだが、関東地方整備局東京港湾事務所が東京都江東区などで建設を進めてきた海底トンネルで、最終の沈埋函の沈設が完了しトンネル内で貫通式を開いたそうなのだ。最終の 6 号函の施工は「五洋建設・東洋建設・日鉄エンジニアリング JV 」が担当しているが、長さ約 930m のトンネルは国内最長となる 134m の沈埋函 7 体で構成され、 11 カ月で沈設し貫通式では工事関係者がトンネル内を通り、貫通を祝ったという。
この「東京港臨港道路南北線」は来年の 7 月までの開通を目指しているが、その時に始まる東京五輪では関係者の輸送ルートとしての活用も視野に入れているという。関東整備局の加藤雅啓副局長は「沈埋函をミリ単位で接合するなど高い技術力を始め、皆さんの提案力や信念のお陰でここまできた。ここからも工事が順調に進捗し、オリンピック・パラリンピックに間に合うよう励んでほしい」と述べていた。「東京臨港道路南北線」は江東区の有明地区と中央防波堤地区とを結ぶ 4 車線道路と歩行者・自転車用通路で構成され、総延長は地上部やアプローチ部を含めると約 2450m に及び、沈埋函は長さ 134m の幅 27.8m で高さは 8.3m と国内最長サイズなのだが、工区は大きく 6 工区に分かれ施工には 6JV 延べ 18 社が携わっている。
東京港ではコンテナ車両の集中などにより青海縦貫線で渋滞が頻発しており、中央防波堤外側地区にコンテナターミナルが新たに整備されるなど貨物取扱量が年々増加している。しかし中央防波堤地区から南北方向のアクセスが青海縦貫道路しかなくコンテナを運ぶトレーラーなどで慢性的な渋滞が生じている。東京ゲートブリッジが8年前の 2 月に開通したことで混雑は若干緩和したものの、コンテナターミナルの整備が進むと周辺の交通量はさらに増えると予想されている。今回の整備によって中央防波堤地区で新たに整備するコンテナターミナルや東京五輪関連の輸送力強化を目指すわけだが、現時点の進捗率は 8 割で来年の 7 月までの全体完成と供用開始を目指し総事業費は 1894 億円を見込んでいるそうなのだ。
この沈埋トンネル工法には 3 つの特徴があって、 1 つ目は海底の浅い場所に設置できるのでトンネルの全長を短くできることなのだが、陸上部のアプローチトンネルを短くできることや土砂の掘削量を抑えられる利点もある。 2 つ目は地盤に大きな支持力を必要としないため比較的軟弱な海底にも設置できることなのだ。 3 つ目は沈埋函をドックなどで製作するため水密性の高いトンネルを築造できることで、沈埋函 1 つ当たりの長さは 134m で幅は 27.8m の高さは 8.35m でこれまで国内で製作した沈埋函の中で最長となっている。同規模の海底トンネルを沈埋工法で築く場合は通常は 8 ~ 10 年の工期を要するが、工事を発注した国土交通省関東地方整備局は東京五輪までに開通させるため約 4 年という短い工期を課したという。
工期短縮のため沈埋函 1 つ当たりを長くして沈埋函の数を当初設計の 8 つから 7 つに減らだけでなく、沈設する沈埋函ごとに転用して取り付けなければならないウインチタワーなどの施工の手間を省き、さらに陸上部のアプローチトンネルの勾配を当初設計の 3.2 ~ 3.6 %から 4 %へとやや大きくすることでアプローチトンネルの延長を短くしたという。沈埋函の製作方法も工夫しドックで沈埋函の鋼殻を製作すると、次に鋼殻を海上に浮かべて鋼殻の内部にコンクリートを打設した。ドックを長期間占有することなく複数の沈埋函を同時並行で製作できるという。国土交通省は海底トンネルの名称をインターネットなどで公募し「皆さんから愛され、広く親しまれる名称」を受け付けたところ延べ 1770 件の案が寄せられたという。
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