日本では長時間労働の是正の必要性から「早く帰りましょう」という呼びかけや、ノー残業デーなどの残業時間を減らす取り組みが各社で行われているが、ただ単に「時間内に早く仕事を終わらせて帰りましょう」という掛け声だけに終わってしまって、残業抑制の目的が独り歩きしている現状があるというのだ。実際ではなかなか思うような結果につながっていないことも多いというのだが、そもそもなぜ働き方改革が必要なのかということなのだが、時代の要請もあって政府が推進しているという背景もあるが、少子高齢化社会における人口減少により働き手の減少が続いていることからこうした「働き手不足」への対策としては、働き手のすそ野を広げると生産性を高めるの 2 通りの方法が考えられるというのだ。
使用者側の残業代の抑制という従業員にとってみれば執拗な掛け声は「コスト削減のために自分たちの給料を減らそうとしている」と思われてしまうこともあり、すると従業員のモチベーションが下がってしまい、従業員のモチベーションが下がると労働生産性も下がるため、働き方改革が達成できず悪循環に陥ってしまうというのだ。重要なのは会社が従業員のモチベーションを重視して取り組んでいくことにあるのだが、例えば残業抑制は従業員の「働きやすさ」を改善する取組であり、また生産性向上は従業員の働きやすさを無理なく実現しつつ、それが会社の業績改善を通じ従業員に還元されるもの、といったことを経営者がきちんと認識し従業員へ伝え続けることが肝要だといわれている。
働き方改革というと労働時間の削減や休みを増やすことにフォーカスが当たりがちだが、そもそものお題目は「生産性の向上」だそうで、長時間だらだら働いて成果も出していない状況を業務の棚卸しなどでメリハリをつけることが目的となっている。ここ数年の働き方改革ブームで日本企業の生産性は上がっているのかというと、日本生産性本部が今月に発表した「労働生産性の国際比較」によると、昨年の就業者 1 人当たり労働生産性は 8 万 1258 ドル(約 824 万円)だったそうなのだ。名目ベースで見ると前年比で 1.5 %上昇しているが、 1 時間当たりに換算すると 46.8 ドル(約 4744 円)となっており、日本はポイントこそ上昇しているが経済協力開発機構に加盟している 36 カ国内での順位は 21 位となっているという。
しかも主要先進 7 カ国の中では最下位でデータ取得が可能な 1970 年以降では最下位が続いているそうで、 1 時間当たりの労働生産性では米国の 6 割強にとどまっているという。ちなみに労働生産性とは「労働者 1 人当たりで生み出す効果、あるいは労働者が 1 時間で生み出す成果を指標化したもの」で、経済成長や経済的な豊かさをもたらす要因と考えられている。日本は主力産業ともいえる「製造業」で25年くらい前から20年くらい前にかけては主要国の中で最も高い労働生産性水準を誇っていた。しかし15年前には 9 位となり10年前には 11 位で5年前は 16 位と、調査を追うごとに順位を落としているという。ただし一昨年は 12 年以来 5 年ぶりに生産性が上昇に転じ長く続いた生産性低下に歯止めがかかった形になっているという。
主力産業の製造業が生産性を高めないことには日本企業の国際的な競争力を高めることは難しいとされているが今後の推移に注目したいと専門家は言うが、働き方改革の成果を出すためには残業抑制を最終目的に捉えることなく、その本質・本来の目的を理解した上で「労働生産性を高める」ための公式を頭に思い描き労働時間の削減と付加価値の質の向上を目指すことが重要だと言われている。またゴールを従業員とそろえ従業員が高いモチベーションを保つことを重視することで改革が確実に進んでいくというのだ。日本は労働生産性が低いだからこれをアップさせなくてはならないというのは間違ってはいないが、何よりあたかも労働者が怠けているかのような印象操作は許してはいけないというのだ。
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