イランは米軍が駐留するイラクのアル・アサド空軍基地に複数のロケット弾を発射したが、米国防総省による、米国主導の有志連合軍が駐留する少なくとも2か所のイラク軍基地に対し、イランから十数発の弾道ミサイルが発射されたという。この数時間前には米軍の空爆によって殺害されたイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官の葬儀が行われ、軍や政府の高官が米国への報復を誓っていたそうなのだ。米国防総省のホフマン報道官は声明で「攻撃による初期の被害状況を調査している」と説明したが、攻撃されたのはアル・アサド空軍基地とエルビルにある基地という。そのうえで「状況と対応策を判断したうえで、米国人、パートナー、地域の同盟国を守るため、必要なあらゆる措置を講じる」と述べていた。
イラン革命防衛隊もソレイマニ司令官殺害の報復としてロケット弾を発射したと認め、国営テレビがこれ以上の死者を出さないよう米国は地域から撤退したほうがよいとしている。トランプ米大統領はイランのミサイル攻撃について被害状況の確認を進めて、声明を発表すると述べるとツイッターに「万事順調だ」と投稿していた。報道官によると大統領は国家安全保障チームと協議したそうで、ある関係筋は米国側に負傷者はいないもようだと語っていた。他の米当局者らはコメントを控えていたがエスパー米国防長官は国防総省での記者会見で、「イランが何らかの方法や形で報復すると予期すべきだ」と語っていたが、トランプ大統領の声明ではイランに対しての報復攻撃ではなく経済封鎖を行うと表明したそうなのだ。
ミサイル攻撃のニュースを受けてアジアの株式市場は急落し、安全資産とされる円や金が買われ米原油先物は一時5%近く急伸した。ただその後はトランプ大統領のツイートを受けややもち直したそうなのだ。イラクには5000人規模の米兵が駐留し他の有志連合軍とともに治安維持にあたるイラク軍の訓練などに従事しおり、米国のポンペオ国務長官とエスパー国防長官は攻撃のニュースを受けてホワイトハウスに入り、米連邦航空局は米国の民間航空会社に対しイラク・イラン・ペルシャ湾・オマーン湾上空での運航を禁止すると発表したという。シンガポール航空もすでにすべての便がイラン領空を迂回して飛行しているが、イラン政府高官はソレイマニ司令官殺害への復讐として複数のシナリオを検討していると述べていた。
トランプ大統領はこれまで報復攻撃を受ければ即座に反撃すると繰り返し警告してきたが、今回の報復攻撃について取材に応じたアメリカ政府関係筋は最初に「少なくとも 20 人に及ぶ死傷者が出ているもようだ」と話していたが、最終的には人的被害はなかったとしている。トランプ大統領はリビアの大使館襲撃で当時のオバマ大統領の指揮能力を批判しており、仮にイランからの報復でアメリカ人の死傷者が多数出ていれば、中東からのアメリカ軍撤退を公約に掲げてきたトランプ大統領にとっては大きな打撃となっていた。北大西洋条約機構当局者はイラクの情勢は流動的で最新の情報を定期的に得ていると説明したうえで、イラクに駐留している訓練任務担当の数百人の一部をイラク国外に移動させることを明らかにしたそうなのだ。
菅義偉官房長官は会見でイランがイラクの空軍基地に複数の弾道ミサイルを発射したことに関連して、今月中旬に予定されている安倍晋三首相の中東訪問は現地情勢を見極めて検討するとしていたが、複数の国内メディアは安倍首相がサウジアラビアなど中東3カ国への訪問を延期すると伝えている。中東情勢の緊迫化を受けて政府は国家安全保障会議の4大臣会合を開いており、安倍首相から情報収集・分析や現地の邦人保護に全力を挙げること、関係国と連携しあらゆる外交努力を尽くすこと、不測の事態への万全の態勢を取ることなどの指示があったという。そのうえで当事者である米国やイランの行為を支持するかどうかについては言及を避け両国への働きかけについても「詳細は控える」と述べるにとどめている。
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