マスコミだけでなく専門家らからも発熱している人でも新型コロナウイルスの PCR 検査が受けられないとの苦情が頻出しているが、厚生労働省のガイダンスによれば確かに検査要件は非常に厳しく 2 月 1 日に出された「新型コロナウイルス感染症に対応した医療体制について」との事務連絡や、 2 月 17 日付の「新型コロナウイルス感染症に対する行政検査について ( 依頼 ) 」と題された事務連絡などによると、 PCR 検査までのプロセスは、当初の段階では各都道府県等の保健所等に設置される「帰国者・接触者相談センター」に連絡し「 2 週間以内に感染者と濃厚接触があって発熱または呼吸器症状がある」としていたのだが、該当したとしてもすぐに検査は受けられず実際はむしろ検査を抑制するようなものであったという。
インフルエンザやそのほかの呼吸器感染症の検査を行ったうえそれらの感染がなかったと判明するか、あるいは感染がわかって治療しても症状が治まらないことが明らかになって初めて PCR 検査への道が開けるという。これだけの関門をくぐっても検査はまだで、これでようやく「 PCR 検査の実施について保健所に相談」することになるというのだ。こうした抑制の結果か感染者がいちばん多い東京都の場合でも 2 月から 3 月にかけて 4 万件を超える相談が「帰国者・接触者相談センター」に寄せられたものの、 PCR 検査が受けられたのはそのわずか 2 %強の 1000 件を下回るほどの絞り込みようだったというのだ。検査希望者の大半が受けられなかったと言うべきなのだが、この間に、隣の韓国では積極的に検査が行われていたのだ。
感染者が激増した 2 月下旬に韓国は新型コロナウイルスの PCR 検査を保健所以外でも実施できるようにしただけでなく、さらに車に乗った状態で検査が受けられる「ドライブスルー方式」を採用して 3 月上旬にかけては一日あたり 2 万件もの検査がなされたというのだ。さらに先月下旬には検査対象者が一人ずつ透明のブースに歩いて入り医師が外側から検査する「ウォーキングスルー」と呼ばれる方式も採用し、検査時間の短縮も可能にしていまや感染の山場を越えたという。日本だって同じようなことができないはずはないにもかかわらずやらなかったとされ、これについてはかねて東京五輪開催のために感染者数をできる限り少なく見せようという政権の意向が強く働いていたといわれているのだ。
そのような中で厚生労働省は中央社会保険医療協議会で症状がない入院患者についても、治療をする上で医師が必要と判断した場合に限定し保険の枠組みでPCR検査ができるとの見解を示したそうなのだが、今までは症状のない患者への検査は基本的に保険が使えず全額自己負担だと2万円程度かかっていたそうなのだ。医学部を設置する大学と病院でつくる全国医学部長病院長会議もすべての入院患者に対し手術などの前に新型コロナウイルスのPCR検査を公費でできるようにしてほしいと国に要望しているそうなのだが、東大病院では今月中旬から外科手術を受ける患者に対し無症状でも手術直前に検査しているという。ところが「検査体制は国内の実情に合わせたものではない」と厚生労働省の事務官は断じている。
それでも新型コロナウイルス対策を所管する西村経済再生担当相が PCR 検査を受けたことがネット上で「ずるい」などと批判を浴びているそうで、 西村経済生成担当相の検査は周辺の職員の感染に伴う措置だったが症状が出ても検査を受けられないといった国民の不満が渦巻いていることを裏付けた形だ。これに関して西村経済生成担当相はツイッターに「 PCR 検査も受け、陰性であることも確認した」と投稿。自身が濃厚接触者には当たらないことも明らかにしたそうだが、この投稿に対し「どうしてあなたが検査を受けられるのか」とか、「政府要人だから検査してもらえる」などと批判的なコメントが相次いだそうで、批判の背景に諸外国と比べて不十分な PCR 検査体制があることは否めないとされている。
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