今国会での成立を断念することになった法案は政府が閣議決定し「閣法第 25 号」として国会提出した「国家公務員法等の一部を改正する法律案」で、国家公務員法や検察庁法など 33 の法律を改正する内容となっている。ひとつの法案で多くの法律を一気に改正するいわゆる「束ね法案」だが、立憲民主党の枝野幸男代表は定年引き上げには野党も賛成しており、この部分については審議を進めるべきだと主張している。地方自治体職員でつくる自治労をはじめとする官公労系労組の支援を受けており、自治労の組織内候補として立憲から比例区で出馬した岸真紀子氏が当選しているし、自治労は中央委員会で「雇用と年金を確実に接続させるためには定年引き上げが必要」との立場を打ち出しているという。
検察官を含む国家公務員の定年を延長する法案の今国会での成立断念を受け、 自民党の世耕参院幹事長は記者会見で「公務員だけ定年延長されていいのか、立ち止まってしっかり議論することが重要だ」と述べ公務員の定年延長自体を見直す可能性を指摘した。今回先送りとなった検察官の定年延長を可能とする「検察庁法改正案」は、国家公務員の定年を 5 年延長する「国家公務員法改正案」などとセットで審議されてきたという。「検察庁法」ばかり注目されがちだが政府与党は「国家公務員法」も同様に今国会での成立を見送ることにしたことで、世耕幹事長は「検察庁法」とともに国家公務員法の審議が先送りになったことについて「立ち止まって考え直すいい時間が出来た」と述べたという。
政府与党は秋にも開かれる次の国会で「検察庁法改正案」を含む「国家公務員法改正案」などの成立を目指す構えだが、自民党の世耕参院幹事長は「そもそもこの国家公務員、地方公務員の定年延長という話は、人手不足の経済環境・雇用環境を前提に議論されてきたテーマだ。新型コロナウイルス感染症拡大により今その前提条件は大きく変わったという風に思う」と解説したうえで、「この景気状況、雇用状況の中で本当に公務員の定年延長をしていいのかどうかも含めて、立ち止まってしっかり議論することが重要だ」と語ったそうなのだ。これから新型コロナウイルスによって新規採用者の内定取り消しも起こっており、雇用環境が厳しくなる中で「議論が成り立つのか考えていく必要がある」と述べたという。
国家公務員や地方公務員の定年延長には長い経緯があって、20年以上前の「国家公務員制度改革基本法」の中に65歳までの定年延長は盛り込まれている。その法律は福田康夫政権のときのものだが当時の民主党の協力で成立している。その後に2回にわたる人事院から政府への意見申出がなされ3回にわたる閣議決定を経て現在に至っているというのだ。これまでの議論の基本は定年延長と年金支給開始年令引き上げが連動することだ。こうした経緯からみても自公政権から民主党政権に移り、その後の自公政権と政権交代を超えて議論されてきた問題なのだ。しかも民主党の野田政権では年金支給開始年齢の引き上げに伴う国家公務員の定年延長を見送って再任用で対応する方針を固めてきたのだ。
今回の世耕幹事長は「国家公務員や地方公務員だけ給料も下がらないまま、5年も定年延長されていいのか」と疑問を呈して、「それだけの仕事があるんだったら、今雇用を失った若い人や、あるいは就職氷河期のまま正社員就業できていないような人たちこそ、公務員として採用することも考えていかなければいけないのではないかと私は思っている」と訴えているが、給与水準は 60 歳時点の 7 割になり、役職者は役職手当が無くなるので 7 割以下というのがこれまでの議論だったはずなのに「給料も下がらないまま」とは驚いている。新型コロナウイルスによる景気・雇用状況の悪化の中で世耕参院幹事長が指摘する案であれば、野党もこれまで賛成してきた公務員の定年延長の是非そのものが焦点になってくる可能性があるという。
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