ミシェル・パストゥロー(文)/ローランス・ル・ショー(絵)(松村恵理訳)『ピエールくんは黒がす き!』
~白水社、 2018 年~
(Michel Pastoureau, Laurence Le Chau, Pierre n’a plus peur du noir , Éditions Privat, 2016)
このブログで何度も紹介している、 ミシェル・パストゥロー による初の絵本(の邦訳)です。
我が国でも、池上俊一先生が絵本を2冊刊行されています( 『カエサルくんとカレンダー―2月はどうしてみじかいの?―』 と、 『カエサルくんと本のおはなし』 )が、このように研究対象や知見を子どもたちにも分かりやすく、あるいは子どものうちからふれさせられるのはとてもありがたいことと思います。
本書は、紋章、色彩、動植物などの歴史を専門に研究しているミシェル・パストゥローが、色をテーマに取り上げた絵本です。
黒が苦手なピエールくんですが、授業で青髭の話を聞いたり、おじいちゃんとカラスを見たり、お父さんとピエール・スーラージュの展覧会を観に行ったりする中で、次第に思いが変わっていく…というお話。(原題を直訳すれば、『ピエールくんは、黒はもう怖くない』です。)
面白いのは、その心変わりは決して大人から押しつけられたものではない、ということ。ピエールくんは黒が大嫌いで、お母さんにもお父さんにも強く主張し、反抗もしていました。「黒がすき!」になるのは、自分でいろんなものにふれ、自分で考えた結果なのです。中でも、おじいちゃんとカラスを見るシーンは印象的でした。
ル・ショーの絵もかわいく、素敵です。
訳者の松村恵理先生は、すでに何冊かのミシェル・パストゥローの邦訳書に携わっていらっしゃり、本書の訳もとても読みやすいです。
松村先生もあとがきでふれられていますが、本書の原著は人気になったようで、赤をテーマにした続編も刊行されています。フランスアマゾンで検索したところ、 2018 年 9 月には青をテーマにした3作目の絵本も刊行されるようです。2作目以降も邦訳が刊行されることを祈ります。
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