エドワール・ジョノー (
二宮敬訳 )
『ヨーロッパ中世の哲学』
~白水社文庫クセジュ、 1964
年~
Edouard Jeauneau, La philosophie médiévale
, Press Universitaires de France, 1963
中世哲学に関する入門的1冊です。本文約 130
山内志朗『中世哲学入門―存在の海をめぐる思想史』ちくま新書、 2023
年
よりも、私には本書のほうがとっつきやすかったです。)
さて、本書の構成は次のとおりです。
―――
序論
第1章 学問的典拠と社会的背景
第2章 9世紀から 11
世紀まで
第3章 12
世紀
第4章 13
世紀
第5章 14
世紀
訳者あとがき
参考文献
人名索引
―――
第1章は、中世思想の源泉として、聖書と自然に加え、「もっと直接的な典拠」として、教父、教会著述家、世俗作家の3つを挙げます。ここでは、異教哲学の借用を正当化するアウグスティヌスの理論を興味深く読みました。
第2章以下は、構成から明らかなように通史的に中世哲学史を概観します。
以下、覚えとして基本的な事項をメモしておきます。
「われわれは巨人の肩車に乗った小人に似ている。われわれのほうが古代人よりも多くのものが見え、さらに遠方まで見渡せる」 (55
頁 )
という有名な言葉は、シャルトルのベルナルドゥスによるもので、彼自身の著作は残っていませんが、ソールズベリーのジョンによる引用で残っています。
サン=ヴィクトールのフーゴーは、聖書の三重の意味(字義的・寓喩的・道徳的)に関する古典的な見解を打ち出しました (70
頁 )
。
エロイーズとの熱愛で有名なアベラールは、その結婚を、エロイーズのおじフュルベールが公にすべきと考えていたところ、秘密裡に行ったため、面目をつぶされたと考えたフゥルベールの刺客により「屈辱的な私刑」を受けます (65-66
頁 )
。またアベラールは、「初めて《神学》という言葉を適用し普及した」 (76
頁 )
とのこと。
80-81
頁には、大学規約から、教授資格を得るための必要年数について。
トマス・アクィナスの《可能態》《現実態》という概念について、材木とそこから作られるテーブルなどを例に、分かりやすく提示している点も興味深いです (102-103
頁 )
。
各時代の哲学の特徴ではなく、エピソード的なメモばかりになってしまいましたが、冒頭にも書いたように、簡潔に中世哲学史の概観が得られる便利な1冊だと思います。
(2024.10.11 読了 )
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