仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2009.12.05
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カテゴリ: 仙台
以前、昭和30年の仙台市長選挙が最高裁で無効と判断されたことを記した。当時としては、異例の事件として全国の話題となったようだ。

■関連する過去の日記  仙台市長選挙の無効判決とやり直し (09年11月21日)

『仙台市史 資料編8 近代現代4 政治・行政・財政』の別冊資料によると、歴代の仙台市長が掲載されているので、任期を確認する。抜粋すると
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15代 岡崎栄松 就任昭和21年6月17日 退職昭和22年4月5日
16代 岡崎栄松 就任昭和22年4月5日 退職昭和26年4月4日
17代 岡崎栄松 就任昭和26年4月25日 退職昭和30年4月12日
18代 岡崎栄松 就任昭和30年5月2日  退職昭和32年12月17日

(「市勢要覧仙台1993」仙台市、1993年により作成 とある。)
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となっている。岡崎市長は昭和30年に再選されたが、32年12月17日、これは最高裁判決の日のようだが、岡崎は失職する。やり直し選挙で33年2月に島野武が市長となっている。

そして、本編で詳しく読もうと考えたのだが、思わぬところに説明があった。

『仙台市史のしおり Vol.23 資料編8 近代現代4 政治・行政・財政』(仙台市史編さん委員会、2006年9月)という、挟み込みの小冊子である。ちなみに、資料編ではなく通史編の方は、順次刊行されているが、第7巻の「近代2」(昭和の前半まで)が最新刊のようで、戦後については未刊行のため、既に刊行されている資料編を紐解いてみたのである。そこで、上記の小冊子に出会ったというわけだ。

元河北新報社専務の京極昭さんが「戦後の仙台市長」と題して、書いている。戦後60年の市政を見渡して、3つのハプニングがあり、その第一として、7期27年の島野市政誕生の契機となった選挙無効事件を取り上げている。なお、第二のハプニングは島野市長急死と保守の奪還、第三は石井市長逮捕後の念願の市役所生え抜き市長誕生、だ。

京極さんのいう第一のハプニングについて、『しおり』から、以下に要約してみた。
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三期目を狙う岡崎と、古里に帰って市長を志した島野の争い。現職有利との票は、蓋を開けると次点と僅か560差。敗れた島野の側は、選挙管理の不適正を理由に無効を申し立て。県選管は仔細に点検の結果、不在者投票に違法な管理があり、適正に行われていれば当落逆転の可能性ありとし、選挙そのものを無効とした。争いは法廷に移り、最高裁判断まで2年余を要したが、無効は変わらず、昭和33年2月やり直し選挙。
なお、京極氏は新聞記者として県選管の無効裁決をスクープした、と回顧している。
当時、岡崎市長は強い影響力を持っていた。旧秋保町生まれ、師範学校を出て、小学校長や郡視学など順調に歩んだが、上司と意見が合わず、東京市役所に転じ、区長を務めた後、仙台に返り初の公選市長に。戦災で焼け野原になった仙台を、一変させる区画整理を推進するなど、現在の仙台の姿を作った功労者である。

保守陣営は、岡崎の代わりに松川金七(県会議員で県医師会長)を出したが、島野は保守層からも広範な支持を得た。
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資料編本体(p231)には、昭和30年執行仙台市長選挙最高裁判決(昭和32年12月17日)の要旨が記されている。事実関係と何が争点だったのかは、これだけでは、よくわからない。

仙台市議会の古い議事録はネットでは読めないので、とりあえず、昭和30年代の宮城県議会の議事録をHPの検索システムで見てみた。

昭和30年9月定例県議会で、平野博議員が一般質問を行っている。仙台市選管の対応をずいぶんと非難している。曰く、下記の通り。

民主政治の基調は自由と公正なる選挙にあるが、去る4月の仙台市長選挙は極めて公明を欠くものであり、仙台市選管の責任は重大である。5月14日仙台市光禪寺通り佐藤輝雄氏外二名が仙台市選管に提起した仙台市長当選及び選挙の無効訴願に端を発し、5月16日の証拠保全申立、続いて5月23日証拠物件提出、6月30日市選管は、異議申立を棄却。7月13日県選管に再び訴願となつて現在審理中である。
この問題は衆院公職選挙法調査特別委員会の取り上げるところとなり、調査委員会より島上その他の調査員が派遣され、また国会で警察庁当局者の吟味するところとなり、県警察本部に対してもそれぞれ捜査に対する指令があったはずだ。
また、仙台地裁より仙台市選管に対し、5月16日に証拠保全のため関係書類一切の提出を3日間の期限で命ぜられたが、いかなる理由か3日を越えて一週間目にやっと仙台地裁に証拠書類が提出されている。公明選挙の本拠たるべき選挙管理委員会が、いささかなりとも疑念を持たれるような行為をあえてとることは、良識で判断できない不可解な問題だ。
次に注目される点は、仙台市選管の異議申立である。申立人の請求を棄却したが、記者団が問題の幽霊票や、破損した投票用紙の梱包状態について質問したところ、答える必要なしと拒否までして、あえてこれを棄却したと報道される。また、審理中の県選管の心証いかんで、これが有効であるか無効であるか決定されるとも報道されている。
質問(1)県選管として公明選挙への措置
 (2)証拠保全命令に際し市選管は県選管に相談した内容
 (3)選挙を管理した者の刑事責任(7月朝日新聞報道では、県警察本部が警察庁に内偵について報告したとするが、刑事部長は関係者に故意は認められず事件になりにくい、と談話を発表。)
 (4)県選管の裁決は重大であるが心証で左右されるのか
 (5)昨日配られた調査報告書について
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答弁の要点は、選挙管理員会高橋委員長から、仙台市から書類は何も到達していない、裁決はどこの干渉も受けずに調査して決定する、などと答弁。また、松本警察本部長から、不当であっても違法でなければ刑事事件として扱わない、取調中であるが刑事部長のとおり慎重に行う、など。
平野議員から、本部長に対して、投票用紙の梱包がわずかの間に破損状態を示しているような選挙管理事務に対しては当然警察権を発動すべき、と再質疑がなされている。





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最終更新日  2009.12.05 02:16:53
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