怪獣亭非日常

怪獣亭非日常

2007.10.31
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カテゴリ: 仮面ライダー

販売中!2008カレンダー☆☆ 仮面ライダーNext ☆☆ICL140
※以下『仮面ライダーTHE NEXT』の内容に触れています。ご注意を

NEXTの話をするまえにFIRSTの話をしておきたい。
『仮面ライダーTHE FIRST』は昭和の仮面ライダーをどうすれば平成の世に甦らせることができるのか、ということから生まれた作品だ。
平成の仮面ライダーがどんどん仮面ライダーとは非なるものになっていくのにも関らず『仮面ライダー』を冠しなければならないジレンマ(既にクウガ以降平成の仮面ライダーは昭和の仮面ライダーよりも長く続いているのだ)と『仮面ライダーSPIRITS』やガシャポンからメディコムトイのフィギュアや実物と変わらない変身ベルトのような大人に向けた玩具にみる昭和ライダーの人気を見るに原点に帰った『仮面ライダー』らしい『仮面ライダー』が作れないのかと考えるのは当然の成り行きだろう。
いささか遅きに失した感のある2005年に映画、(というよりもオリジナルビデオに近いかたち)で作られた「FIRST」はその昭和仮面ライダーをリファインしたデザイン(出渕裕)の秀逸さとその見事な造形の完成度によって強いインパクトを与えた。(出渕裕は『仮面ライダーアギト』のデザインワークスでもサソリをモチーフにスコーピオンロードというドクトルGそのものな怪人を既に作り出したりしていましたな)
それは仮面ライダーはデザインとしては今まさにこうでしかありえないという姿形だったわけだが作品そのものはどうであったか。

作り手は『仮面ライダー』を原点に立ち戻って作るに当たって「本郷猛と緑川(ルリ子)の悲恋」を話の中心に置いた。改造人間ゆえの苦悩を描くならばこれ以上の題材はないわけだが本作ではそこの部分をぼやかしたかたちでしか描いていない。改造人間が人間とどう違うのかは作中では詳しく語られることもなくヒロインに婚約者を殺した犯人として憎まれながら不器用な愛を捧げる本郷、というのは「改造人間の苦悩」とはまた別のものとなっている。
物語の展開としてはなぜ緑川が殺人者と思っている本郷を警察に知らせるでもなく放置しているのかが納得いかない・・・などの筋立ての弱さ、説得力を欠く部分も辛いし本郷に助けられながら女は気付かず憎悪の目を向け続ける、という作劇にイライラさせられる。
本郷と同じく人間・緑川への愛に殉じる改造人間・一文字という「仮面ライダー」的三角関係(このあたり脚本の井上敏樹の代表作「鳥人戦隊ジェットマン」を想起させる)も、並行して描かれる若い青年と少女の恋の物語も改造される事で救われたような描き方であるが故に物語が恋愛の喜び・悲しみも描ききれず「改造人間」という重い十字架も胸にせまってはこない。

重いストーリーではなく格好いいアクションにこそライダーの本質はあるという点でいうならば『仮面ライダー THE FIRST』は恐らく観たかったはずの仮面ライダーなのかもしれない。
ドラマ面の脆弱さに目を瞑ってライダーと怪人の優れたデザインによるリメイク、きっちり見どころを抑えた見事なアクションのカッコよさを楽しむための作品、それが『仮面ライダーTHE FIRST』なのである。

長くなったがその続編である『THE NEXT』はどうなのだろうか。
本作品の冒頭は病的なアイドルオタクが自室で殺される描写を何故か長く見せる。(母親を演じているのが何故か80年代前半のロマンポルノを代表する女優・風祭ゆき(気付かなかった)、なのはあまり関係ないが)ここの描写から既に非常に辛い。もって回った描写でありながらその死に様がそれ程映像的に大したことがないのも困る。
また教職についている本郷が学級崩壊したクラスで教鞭を執る姿も(童貞コールを受ける仮面ライダーって・・・)痛々しい。
本作は前作の恋愛ドラマに対して旧1号編にあった怪奇性を話の主軸に前作では愛する女性のためだけに戦った1号ライダーが孤独な少女・琴美のために戦う姿とショッカーにより新たに生まれた改造人間・風見志郎が寄せる妹への愛情を話の主軸にしている。
しかしながらここで描かれる怪奇描写はかっての『仮面ライダー』にみられた古典的な怪奇映画的な怖さとは別種なものである。
現代的な荒廃した学校及び芸能界を舞台にしたよくある「Jホラー」・・は描き方にも問題もあろうが残念ながら『仮面ライダー』の世界とは水と油で冒頭のシーン以降の不愉快さと違和感が最後まで払拭されることはない。
故に『仮面ライダー』的なものと(あまり成功していない)Jホラーが分離したまま話が進んでいく。
前作と同じく仮面ライダーと個性的なアレンジの施された怪人個々は田口トモロヲや益子梨恵ら役者の愉しい怪演を含め)や戦いはそれなりに面白いが結局のところそれを活かせる土台たるドラマ作りは出来ていないのである。
作り手が仮面ライダーに新しい可能性を、として考えたであろうホラー描写及びドラマ作りには残念ながら全く観るところがないという結果になっている。


暗く哀しみを湛えた大人向けの話を作るのも悪くない。しかしそれが上手く作れないのであれば怪人やライダーの卓越したアクションをキチンと堪能できるバランスの取れた話を作ってほしい。
スーパーヒーローフェアの一本として製作された『仮面ライダーZO』は一人の少年を救うためだけに戦うヒーロー・仮面ライダーの原点を描いた秀作であった。
単純でいいので筋の通った話でいいのだ。別に奇をてらうこともないしP-12にすることもないと思う。一見頼りなく色恋沙汰にはトンと向かないが芯の強い本郷とニヒルだが情に厚い一文字、キザな風見は嫌いではないので次の作品が観たい。
次の仮面ライダーは誰のために何ゆえに戦うのだろうか?





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最終更新日  2007.11.01 02:11:57
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